医療の歴史に新たな1ページが刻まれようとしています。慶応義塾大学発の再生医療スタートアップである「セルージョン」が、iPS細胞から角膜内皮細胞を生み出す革新的な事業を展開しているのをご存知でしょうか。世界的にアイバンクのドナー不足が深刻化する中、この技術は重い目の病気に苦しむ人々にとって、まさに希望の光と言えます。
インターネット上でもこのニュースは瞬く間に話題となり、「これで救われる人が増えるなら素晴らしい」「日本の再生医療技術に期待したい」といった、応援や称賛の声が多数寄せられています。多くの人がこの最先端技術の動向に注目しているようです。
同社は2020年夏ごろから、慶応義塾大学病院において、水疱性(すいほうせい)角膜症と呼ばれる重度の眼疾患を対象とした臨床研究を開始する予定です。この病気は、角膜の一番内側にある細胞が減少し、目が白く濁って最悪の場合は失明に至る恐れがあります。
ここで注目したいのが、「iPS細胞」という専門用語です。これは人工多能性幹細胞のことで、人間の皮膚や血液の細胞に特定の遺伝子を組み込むことで、あらゆる組織や臓器の細胞に変化できる能力を持たせた、まさに万能の細胞を指します。
セルージョンの最大の強みは、このiPS細胞から途中の段階を経ずに、ダイレクトに角膜内皮細胞へと変化させる独自の製造方法を確立した点にあります。これによって、不純物が混ざらない極めて純度の高い細胞を、効率よく大量に生産できるようになりました。
この画期的な企業を率いるのが、医師としての顔も持つ羽藤晋社長です。慶応義塾大学医学部を卒業後、同大眼科学の助教などを経て、2015年に同社を立ち上げました。平日は経営に没頭し、土曜日には東京都日野市にある眼科で現在も患者と向き合っています。
長年、角膜移植の現場でメスを握ってきた羽藤社長は、一人の医師が一生の間に救える患者の数には限界があると感じていたそうです。だからこそ、自らリスクを背負って起業し、世界中のより多くの人々へ新しい治療法を届ける道を選んだのだといいます。
筆者は、このような現場の痛みを誰よりも知る医師がビジネスの主導権を握ることこそが、真に患者に寄り添った医療革新を生むのだと確信しています。単なる利益追求ではなく、「失明を防ぎたい」という強い信念が原動力になっている点が素晴らしいです。
ビジネスとしての準備も着実に進んでいます。2020年に入り、同社は慶応大発のベンチャーキャピタルなどから総額3億6000万円もの資金調達に成功しました。これにより、外部の製造専門企業とも連携しながら、事業化のスピードをさらに加速させています。
今後は、早ければ2022年に治療の有効性と安全性を確かめる臨床試験(治験)へと進み、翌年の2023年には製造販売の承認申請を行うという具体的なロードマップが描かれています。実用化の足音は、着実に近づいていると言えるでしょう。
世界を見渡すと、角膜の移植手術を待っている潜在的な患者は1300万人にも上る一方で、実際に1年間で手術を受けられるのはわずか18万人にとどまります。この圧倒的な供給不足という医療課題を解決するために、日本のベンチャーが果たす役割は極めて大きいはずです。
最先端の科学技術が、医師の情熱と融合することで、世界中の人々の視力を守る社会が実現しようとしています。私たちの目の前で繰り広げられるこの挑戦の行く末を、これからも温かく、そして大いに期待を込めながら見守っていきたいものです。
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