自動車部品サプライヤーの採用戦略!ヨシワ工業が挑む出前授業と南条装備工業のリクルーター制度で新卒確保へ

自動車業界が大きな変革期を迎える中、部品メーカー各社は優秀な若手人材の確保に向けて、これまでにない革新的なアプローチを開始しています。マツダ車のブレーキ部品製造を主力とするヨシワ工業(広島県海田町)は、深刻化する高卒採用の競争を勝ち抜くため、広島県外の工業高校を対象としたユニークな授業支援に乗り出しました。

この取り組みは、同社が誇る「鋳造(ちゅうぞう)」技術をフックに、進路指導に影響力を持つ教諭との強固なネットワークを築くことが狙いです。鋳造とは、高温で溶かした金属を型に流し込んで目的の形状に冷やし固める、ものづくりの根幹をなす伝統的な金属加工技術を指します。学校現場への技術指導を通じて、生徒たちへの知名度を間接的に高める戦略が注目を集めています。

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五感で学ぶものづくりの原点と熱いエール

2019年12月下旬、福岡県立香椎工業高校(福岡市)において、地元の工業高校の教諭らを対象とした勉強会が開催されました。実習では、特殊な砂で成型した型に溶融した鉄を注ぎ込み、オリジナルの表札を制作する体験が行われています。講師を務めたのはヨシワ工業の吉野正弘社長や最前線で活躍する熟練エンジニアたちです。

参加した教諭らは熱心に作業へ没頭し、ものづくりの原点に触れました。体験した教諭からは「鉄の圧倒的な熱量や特有の匂いを肌で感じた。生徒の可能性を広げるために、ぜひ実際の授業でも展開したい」といった前向きな声が上がっています。SNS上でも「これぞ生きた教育」「プロから直接学べる機会は貴重」と、企業の課外支援を称賛する反響が広がっている状況です。

実習に先立ち、吉野社長は激動の自動車業界における自社の展望を熱弁しました。昨今のモビリティ業界では軽量化を目的としたアルミ素材への転換が加速していますが、耐久性や耐腐食性に極めて優れた鉄の需要が完全に消えることはないと言い切ります。こうしたトップの力強いメッセージは、これからの時代を担う学生や教育関係者にとって大きな安心感につながるでしょう。

採用難を突破するサプライヤーの知恵と新機軸

ヨシワ工業が県外に活路を求めた背景には、地元・広島県内における異例の採用過熱があります。2019年9月末時点の広島県内の高卒求人倍率は3.51倍に達しており、全国平均の2.75倍を大きく上回る激戦区です。従来の求人票を配るだけのスタイルでは、知名度の高い大手上場企業に埋もれてしまうという危機感が同社を突き動かしました。

企業の知名度に頼らない独自の採用手法を模索する動きは、他のサプライヤーにも波及しています。ドア部品を製造する南条装備工業(広島市)では、2020年春の新卒採用から、年齢の近い若手社員が学生をサポートする「リクルーター制度」を本格的に導入しました。人事担当者には質問しづらい本音の疑問に答えることで、学生の不安を丁寧に解消しています。

この施策は見事に功を奏し、これまで約5割に上っていた内定辞退率は1割以下へと劇的に激減しました。入社後のミスマッチによる早期離職を防ぐ手立てとしても、非常に有効な手段であると確信しています。知名度の低さに悩む中小・中堅企業こそ、こうした「顔の見える関係性」を築く泥臭くも温かいアプローチが必要なのではないでしょうか。

ただ待つだけの採用から、自ら技術の魅力を伝えにいく攻めの採用へ。教育現場と企業が手を取り合う試みは、日本の製造業の未来を明るく照らす一石となるに違いありません。

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