日本の政治史に新たな金字塔が打ち立てられました。2019年11月19日、安倍晋三首相の通算在任日数が2886日に到達し、戦前の桂太郎氏と並んで歴代最長となったのです。この長期政権を支えてきた大きな柱の一つが、経済政策「アベノミクス」による株価の上昇であることは間違いありません。2012年12月26日の第2次政権発足以降、日経平均株価は約2.3倍という驚異的な伸びを記録し、戦後の歴代政権の中でもトップクラスの成果を上げています。
SNS上では、この記録更新に対して「これほど長く続いた政権は記憶にない」「景気が上向いた実感がある」という肯定的な意見が目立つ一方で、「株価は上がっても生活は楽にならない」といった冷ややかな反応も入り混じっています。市場の盛り上がりと国民感情のギャップは、今の日本が抱える根深い課題を反映しているのかもしれません。私個人としても、安定した政治基盤がもたらした恩恵は認めつつも、その勢いが永続的なものになるのか、今は非常に重要な岐路に立たされていると感じています。
変質する「株高のエンジン」と内需株へのシフト
株価の上昇率を詳しく見ると、これまでの「輸出頼み」の構図に変化が生じていることが分かります。第2次、第3次政権までは、日銀による「異次元金融緩和」を背景とした円安進行が、自動車や電気機器などの輸出企業を力強く押し上げてきました。しかし、2017年11月1日に発足した第4次政権以降は状況が一変しています。株価の上昇率は約6%に留まり、主役は海外景気に左右されにくい第一三共やファーストリテイリングといった「内需関連株」へと移り変わっているのです。
ここで注目すべきは、投資家が企業の「中身」を厳しく見極め始めている点です。例えば、経営の透明性を高める「コーポレートガバナンス(企業統治)」の改革に積極的な企業には、今も熱い視線が注がれています。2019年に「物言う株主」として知られる海外ファンドから取締役を受け入れたオリンパスや、巨額の自社株買いを発表したソニーなどがその好例です。これらは、外部の声を反映させて企業価値を向上させようとする動きが、市場から正当に評価された結果だといえるでしょう。
海外投資家が危惧する「外為法改正」の影
しかし、この好循環に暗い影を落としているのが、現在国会で議論されている「外為法(外国為替及び外国貿易法)改正案」です。これは安全保障の観点から、海外投資家が日本の重要企業に出資する際の規制を強化する法律ですが、市場からは「日本市場の閉鎖性を強めるのではないか」という懸念の声が噴出しています。せっかく進んできた企業統治改革の動きが、この規制によって止まってしまうことを海外勢は最も恐れているのです。
専門家からは、日本企業が効率的に利益を生み出しているかを示す「自己資本利益率(ROE)」を改善するための努力が、まだ不十分だとの指摘も出ています。政治が旗を振る「官製相場」の時代は終わりを告げ、これからは企業が自らの力で成長ストーリーを描き、投資家を納得させることが求められています。最長政権という安定の影で、真の民間主導の改革が進むのか。安倍政権がこれから歩む道は、日本の経済的自立を試す真剣勝負の舞台となるはずです。
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