2020年2月4日現在、日本の素材産業を牽引するダイセルが、大きな注目を集めています。実はこの企業、1908年に設立された堺セルロイドなどを源流に持ち、1919年にはセルロイド製造を行う8社が合併して誕生した「大日本セルロイド」を前身としています。かつてはピンポン球や人形の素材として親しまれたセルロイドがその祖業ですが、驚くべき歴史的繋がりがもう一つあります。それは、1934年に同社から分離した写真用フィルム事業が、現在の富士フイルムの礎となっているという事実です。
現在のダイセルは、液晶パネル向けフィルムに欠かせない酢酸セルロースや、たばこ用フィルターの原料、さらには自動車の安全を支えるエアバッグのインフレーター(ガス発生装置)など、私たちの生活に密接した高度な素材を展開しています。そんな同社の舵取りを担うのが、技術畑のスペシャリストである小河義美社長です。彼は、現場の生産ノウハウを可視化し効率を極限まで高める「ダイセル式生産革新」を構築した立役者でもあります。
この生産革新の手法は2004年までに全国の工場へ展開され、労働生産性を従来の3倍にまで引き上げるという劇的な成果を上げました。この成功体験こそが、同社の強固な基盤となっています。私個人の視点から見ても、単なるコストカットではなく、製造現場の知恵を「見える化」して共有するこの手法は、日本のモノづくりが目指すべき理想的な進化の形であると感じます。小河社長の率いる新生ダイセルが、この成功体験をさらにどう昇華させるのか期待が高まります。
組織再編で開く新たな成長の扉
2019年6月に社長に就任した小河氏は、その勢いを止めることなく大胆な組織改革を断行しました。特に注目すべきは、2019年10月に発足した、外部の専門家を積極的に登用したM&A(企業の合併・買収)チームの設置です。これに加えて、社長直轄の研究部門を新設することで、意思決定のスピードを劇的に早めようとしています。素材メーカーという巨大組織でありながら、これほど柔軟かつ挑戦的な姿勢を見せるのは非常に稀で、市場関係者からも「老舗企業がスタートアップのようなスピード感を得ようとしている」といった驚きと期待の反響がSNS上でも多く見受けられます。
変化の激しい現代において、自社技術を磨くだけでなく、外部の知恵を取り入れ即座に研究開発へ反映させるこの取り組みは、非常に理にかなっています。組織が大きくなればなるほど硬直化しがちですが、社長直轄でプロジェクトを進めることで、そのリスクを回避しようとする戦略は、今後の製造業における組織再編のスタンダードになるかもしれません。ダイセルがこれからどのような新領域を切り拓いていくのか、これからの動向から目が離せません。
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