2019年6月26日に開催された大手電力各社の株主総会において、九州電力は特に大きな注目を集めました。その背景には、原子力発電所の「特定重大事故等対処施設」(以下、特重施設)の建設が期限に間に合わないという深刻な問題が横たわっていたからです。この特重施設とは、意図的な航空機衝突などのテロ行為が発生した場合に、原子炉の重大な損傷を防ぐための重要な安全対策施設であり、新規制基準のもと、工事認可から5年以内に完成させることが義務付けられています。
この建設遅延という事態に対し、九電の池辺和弘社長の解任を求める株主提案がなされるという異例の展開となりました。安全対策への取り組み自体は訴え、一定の理解を得ることはできましたが、期限への対応の遅れについて、池辺社長は株主に対して陳謝せざるを得ませんでした。このことは、安全を最優先すべき原子力発電事業における、企業の危機管理体制や計画性の甘さを露呈したと言えるでしょう。私は、安全対策が未完了のまま稼働を続けることは断じて許されず、今回の稼働停止はやむを得ない英断だと考えます。
特重施設の完成遅れにより、九電が保有する川内原子力発電所1号機(鹿児島県)は2020年3月に、そして2号機も同年5月には稼働が確実に停止する見通しです。テロ対策施設の建設遅れを理由とした原発の稼働停止は、全国的にも初めての事例となるでしょう。特重施設が完成するまでの間、九電は代替電源として火力発電所の燃料費が増加するなど、業績への影響も避けられない状況です。このような事態は、単に九電一社の問題に留まらず、原子力規制委員会が定める新規制基準の厳格さを改めて認識させるものです。
SNSが示す、原発の「安全」への高い関心
この九電の株主総会のニュースは、SNSでも大きな反響を呼びました。特に「テロ対策施設」というワードが、原発の安全に対する人々の根強い不安と関心の高さを浮き彫りにしています。「国の定めた期限が守れないなんて、安全管理体制に根本的な問題があるのではないか」といった厳しい意見や、「テロ対策が間に合わないなら、止めるのは当然だ」と稼働停止を支持する声が多く見受けられました。これは、電力の安定供給だけでなく、原発における「万が一」のリスクをいかに低減できるかという点に、社会全体が敏感になっている証拠でしょう。
原子力発電は、CO2を排出しないという点で、地球温暖化対策の切り札の一つと見なされることもあります。しかし、福島の事故以降、その安全性に対する基準は飛躍的に厳格化されました。今回の九電の事例は、安全対策の実施を「コスト」や「時間」の問題として捉えるのではなく、企業としての「絶対的な義務」として遂行することの重要性を痛感させるものです。電力会社は、住民や株主、そして社会全体からの信頼を取り戻すため、今後も弛まぬ努力を続けるべきであると強く思います。
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