2019年07月01日、日本の農業界に新たな風を吹き込むような、非常に興味深いニュースが飛び込んできました。静岡県静岡市で野菜の生産・販売を手がける農業ベンチャー「鈴生(すずなり)」が、青果卸の大手である横浜丸中ホールディングス(HD)と強力なタッグを組み、大規模なプロジェクトを始動させたのです。両社は共同で、静岡県袋井市内に完全人工光型ではなく、太陽光利用型と思われる大規模な水耕栽培の「植物工場」を新設することを発表しました。
このプロジェクトのために、両社はすでに2018年11月に共同出資会社「テングリーンファクトリー」を静岡県磐田市に設立しており、準備を着々と進めてきました。今回投じられる総投資額は、なんと6億円にものぼります。建設予定地は袋井市内の広大な1.3ヘクタールの土地で、そこに1ヘクタールもの巨大な建屋を建設するというのですから、その本気度が窺えるでしょう。稼働開始は2020年春を目指しているとのことで、来年の桜が咲く頃には、ここから新しい野菜が出荷されているはずです。
天候リスクをゼロに?「水耕栽培」とハイテク管理の凄み
今回導入される生産システムは、天候不順や災害が相次ぐ現代の農業において、まさに救世主とも言える仕組みです。具体的には「水耕栽培」という技術が採用されます。これは、土を使わずに肥料を溶かした水溶液で作物を育てる栽培方法のことを指します。土壌由来の病気のリスクが減るだけでなく、生育スピードが早いのが特徴です。新工場では、水量や栄養分を自動調整し、さらに温度や湿度までもシステム管理することで、リーフレタスやサラダホウレンソウなどを1日あたり合計300から400キログラムも生産する計画です。
このニュースに対し、SNS上では早くも感度の高いユーザーたちが反応を示しています。「最近は台風や猛暑で野菜が高騰しがちだから、工場野菜が普及して安くなるのは大歓迎」「農薬の心配が少ない水耕栽培なら、子供にも安心して食べさせられそう」といった、食の安全と価格の安定を期待する声が多く挙がっているようです。テクノロジーの力で農業の不安定要素を排除しようとするこの試みは、消費者にとっても大きなメリットがあると言えるでしょう。
「市場を通さない」という流通革命
今回の提携で私が特に注目しているのは、生産から販売までの「一気通貫体制」が構築されている点です。通常、野菜は市場(いちば)を通して競りにかけられますが、今回は横浜丸中HDのグループ会社が生産された野菜を全量買い付けます。そして、そのまま取引先である惣菜メーカーなどへ直接供給されるのです。これにより、市場手数料や袋詰めなどの加工作業にかかる時間とコストを大幅にカットすることが可能になります。
鈴生の鈴木貴博社長が「産地から売り先まで一気通貫の体制を築くことで収益を確保したい」と語るように、これは単なる工場の建設ではなく、農業のビジネスモデルそのものの変革です。私自身、毎年のように繰り返される気象災害による野菜不足を目の当たりにし、食糧供給の脆弱さを危惧していました。しかし、需要に合わせて供給量を調整でき、価格も安定させられるこのような取り組みは、これからの日本の食卓を守る重要なインフラになると確信しています。
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