世界中の視線が中東情勢に注がれる中、国際原子力機関(IAEA)が2019年05月31日、極めて重要な報告書をまとめました。その内容は、イランが英国、フランス、ドイツなどと結んだ「核合意」を、現時点ではしっかりと守っているというものです。米国との対立が激化し、いつ合意が崩壊してもおかしくない状況下で、イランがどのような動きを見せるかが懸念されていただけに、ひとまずは胸をなでおろすニュースと言えるでしょう。
報告書によると、核兵器の材料にもなり得る「低濃縮ウラン」や、原子炉の減速材などに使われる「重水」の貯蔵量は確かに増加傾向にあります。しかし、核合意で定められた上限(ウランは300キログラム、重水は130トン)は下回っているとのことです。また、ウランの濃縮度についても上限の3.67%を超えておらず、ルールは守られています。ちなみに低濃縮ウランとは、核分裂しやすいウランの割合を人工的に高めたもので、この濃度を上げ過ぎると兵器転用が可能になるため、国際社会が厳重な監視を続けている物質です。
今回の報告書がこれほど注目されたのには、明確な理由があります。それは、イランのロウハニ大統領が2019年05月08日、米国の制裁強化への対抗措置として、核合意の義務履行を一部停止すると宣言していたからです。その衝撃的な宣言の後、初めて公表されたIAEAの公式見解だったため、イランが言葉通りに合意を破り始めたのか、それとも踏みとどまっているのかが最大の焦点となっていました。
揺れる国際情勢と私たちの視点
ネット上のSNSなどを確認すると、「とりあえず一安心だが、いつまで持つか」「ギリギリの駆け引きが続いていて怖い」といった、安堵と不安が入り混じった声が多く聞かれます。確かに、今回の報告書ではイラン側の「一部停止宣言」に対する直接的な政治的見解は示されていません。これは、あくまでIAEAが技術的なデータに基づく検証結果を示す機関であり、政治的な判断を下す場ではないからでしょう。
私個人の意見としては、イランは「合意は守っている」という実績を盾に、国際社会、特に欧州諸国に対して「米国を説得してくれ」という強烈な無言のプレッシャーをかけているように見えます。彼らはルールを破る寸前で踏みとどまりながら、外交的な交渉カードを切っている最中なのです。この「順守」は平和への意思というよりは、ギリギリの瀬戸際外交の一環と捉えるべきかもしれません。この均衡が崩れた時、中東情勢は一気に不透明さを増すことになるでしょう。
来る2019年06月10日からは、IAEAの定例理事会が始まります。そこでは各国の代表から、不透明感を増す核合意の行方について、懸念の声が相次ぐことは避けられない見通しです。私たちメディアとしても、この一触即発の状況がどのように転ぶのか、引き続き注視していく必要があります。
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