🌲地域資源を活かせ!安曇野市「里山再生計画」が描く未来🌲森林整備、地元材活用の最前線

長野県安曇野市が推進する「里山再生計画」、通称「さとぷろ。」が、いよいよ開始から5年目となる節目を迎えました。荒廃が進む里山の整備という全国的な課題に対し、市民を巻き込んだこの取り組みは、今、確実にその成果の輪を広げています。一般の住民が地域の森林に関心を持ち、再生へとつなげる安曇野市の試みは、森林問題の解決策として大いに注目されるべきでしょう。この地域に根差した持続可能な活動は、他自治体の参考にもなるに違いありません。

その象徴ともいえるのが、森林整備の知識と技術を身につけたい人を対象とした「さとぷろ。学校」の存在です。2019年4月24日には、市東部山間部の施設で第4期の開校式が開催されました。今年の参加者は昨年より5人増え、11人となったそうです。驚くべきことに、受講者には市外からの応募も見受けられ、「マツタケが採れる山に復活させたい」といった具体的な声も上がっています。事務局は、地域の力を借りて里山整備に取り組む重要性を強調しており、今後は竹林整備や森林の健康状態測定、そして木の伐採体験などが予定されているとのことです。市が事務局を担当しつつも、卒業生が運営に携わるなど、活動を支える基盤が年々厚くなっていることは喜ばしい限りでしょう。

安曇野市は面積のおよそ6割が森林という恵まれた環境にありますが、一方で、整備を担う人材の不足や、地域産材の流通コストの高さといった構造的な問題を抱えています。結果として手入れされない山は荒廃し、それによって自然災害や松枯れなどの病虫害発生リスクが高まってしまうという悪循環が生じていました。この状況を打破するため、市は2015年に「木質バイオマス利用促進」「安曇野材利用促進」「里山保全・体験学習」「里山学校」「松枯れ対策実践」という5つのプロジェクトを柱とする5カ年計画を策定したのです。市民の森林問題への関心を喚起し、森林保全と地域材の有効活用という二つの目標の実現を目指しています。

例えば「木質バイオマス利用促進」プロジェクトからは、伐採した木材を薪として加工し、地域の入浴施設で利用する取り組みが生まれています。さらに、この事業をきっかけに市民グループ「あづみの樹楽会」が発足し、里山整備で発生した薪を希望者に提供する活動を展開しており、市民からは利用希望が絶えない状況です。また、地元産木材の活用で特に目覚ましい成果を上げているのが、長野県建築士会安曇野支部による松枯れ材を活用した積み木です。これは、2万個もの積み木を使った壮大なオブジェ制作を通じた地域活動「ツミキノチカラ」として、2018年の建築士会全国大会で最優秀賞を獲得したのです。松枯れ材という、ともすれば廃棄されてしまう資源を魅力的な作品へと昇華させ、地元材のPRにつなげた功績は計り知れません。

この成功を受け、2018年秋に開催された、木材や木工品、キノコなどを販売する大型イベント「里山市」では、松枯れ材の販売が大変好評を博しました。今年の里山市でも、市有地で伐採した木材をDIY(日曜大工)で需要の高い2×4(ツーバイフォー)サイズに製材し、販売する計画が進められているそうです。事務局である市耕地林務課は、「建築士会からもウッドデッキに使いたいという声が出ており、住宅建築を依頼するユーザーへ地元材の魅力をPRする良いきっかけになるでしょう」と期待を寄せます。DIY愛好家をターゲットにすることで、地元材の流通促進と活用拡大が期待できるという、非常に戦略的なアプローチだと評価できるでしょう。

さて、この里山再生計画は2019年度が最終年度となります。そのため、企業や林業関係者、大学研究者、そしてNPOなどで構成される市の協議会が、次期計画策定に向けた事業の評価と課題の検証作業を開始しています。例えば、マツタケが採れる森林の整備など、一部の活動では参加者が当初の予定を大幅に上回るなど明るい兆しが見えています。しかし、「里山市」のような大型イベントでは、入場者数が当初の目標に届いていないという課題も残されています。里山整備は長期にわたる息の長い事業ですから、今後も継続的に市民の関心を高め続け、活動への参加を促していくことが、最も重要な課題となるでしょう。

この安曇野市の取り組みは、長野県内の他自治体の先進事例と併せて考えることで、より大きな視点から森林資源の活用について学ぶことができます。例えば、同じ長野県内の伊那市では、2016年に「伊那市50年の森林(もり)ビジョン」を策定し、さらに長期的な展望で森林資源を守り活かす様々な事業を展開しています。特筆すべきは、2019年春から始めた「木質化事業」です。周囲に危険を及ぼすとして伐採された「支障木」などを活用し、テーブルや椅子といった家具を製作し、4月からは市役所の待合場所などに設置したそうです。これにより、来庁者に木の温もりを感じてもらい、地域産材の良さを自然な形で広めています。

伊那市は、その面積の8割以上を森林が占めており、林業関連企業も多数存在します。そこで「地域材利活用研究会」に参加する企業らは、伊那産の木材でデザイン性の高い塀を試作し、伊那市役所内で3日間の公開を行いました。伊那市の白鳥孝市長は、地震によるブロック塀の倒壊リスクを挙げつつ、「木の塀という選択肢もあるのではないかと考え、試作をお願いしました。高級感があり、地域産材を使う新しいスタイルのきっかけになれば幸いです」と述べたそうです。木の塀はブロック塀の2倍以上の価格になると見込まれていますが、市の助成を受け、2019年度内に販売を開始する方針です。これは、地域材の付加価値を高め、新たな市場を創造しようという強い意思の表れであり、安曇野市の取り組みとも相まって、信州における里山・森林再生の動きは、ますます加速していくことでしょう。

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