2019年9月14日に発生したサウジアラビアの石油施設への攻撃は、世界のエネルギー市場に激震を走らせました。本来であれば、こうした「地政学リスク」、つまり特定の地域が抱える政治的・軍事的な緊張が引き金となって原油価格は急騰し、それに応じる形で石油製品や石油化学製品の価格も上昇するのが通例です。しかし、2019年9月25日現在の国内市場を見渡すと、驚くほど静かな反応に終始しています。
市場の反応がこれほどまでに薄い背景には、世界的な経済の減速感が色濃く影を落としている点が挙げられます。景気が停滞すれば、工場を動かす燃料やプラスチック製品の原料となる石化製品の需要も当然ながら細ってしまうでしょう。SNS上でも「コストが上がっても、物が売れない今の状況では価格転嫁は不可能ではないか」といった、企業の苦境を察する冷静な意見が目立っており、楽観視できない空気が漂っています。
消費税増税と内需の不透明感が価格改定の壁に
2019年10月1日には、いよいよ消費税率の引き上げが控えており、国内の内需動向はまさに正念場を迎えるといえます。政府は景気の冷え込みを防ぐためにさまざまな政策を打ち出していますが、その効果がどこまで浸透するかについては不透明な部分が多いのが実情です。需要家サイドはコスト増に対して非常に敏感になっており、原材料価格を製品価格に上乗せしようとする動きは、今後ますます難航することが予想されます。
私自身の見解としては、供給側のコスト増という「プッシュ要因」よりも、需要側の冷え込みという「プル要因」の弱さが市場を支配していると感じます。産業資材の価格が横ばいで推移するという見通しは、一見安定しているようにも見えますが、その実態はデフレ的な圧力に抗えない経済の脆さを露呈しているのではないでしょうか。供給網の混乱という大きな材料さえ飲み込んでしまうほどの、景気後退への強い警戒心がうかがえます。
今後は、サウジアラビアの生産回復状況とともに、10月以降の日本の消費マインドがどう変化するかを注視しなければなりません。もし増税後の冷え込みが予想を超えて長引けば、石化製品の価格は下支えを失い、さらなる下落圧力を受ける可能性も否定できないでしょう。企業は単なるコスト計算だけでなく、消費者の心理的動向をこれまで以上にシビアに読み取ることが求められる、厳しい秋の幕開けとなりそうです。
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