2019年11月4日、立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長は、日本の組織に根深く残る「内向きの論理」に対して鋭い一石を投じました。きっかけとなったのは、世間を騒がせている関西電力の幹部らによる金品受領問題です。菓子折りの中に金貨が忍ばされているという、時代錯誤な光景に驚きを隠せなかった方も多いでしょう。この一件は、単なる不祥事という枠を超え、日本企業のリーダーに求められる資質の歪みを浮き彫りにしています。
米国のPR会社エデルマンが2016年に実施した「トラストバロメーター」という意識調査によれば、経営者に求める資質として欧米では「正直さ」が圧倒的1位でした。しかし、日本では「決断力」や「有能さ」が優先され、「正直さ」は5位に沈んでいます。SNSでは「日本の組織は結果さえ出せばプロセスに目をつむりすぎる」といった嘆きの声が溢れており、今回の関電問題における記者会見の様子も、まさに「裸の王様」を見ているようだと批判が集まっています。
コンプライアンスの本当の意味を知っていますか?
私たちは日常的に「コンプライアンス」という言葉を耳にします。一般的には「法令順守」と訳され、法律さえ破らなければ問題ないと考えられがちです。しかし、出口氏はこれに異を唱えます。真のコンプライアンスとは、組織のあらゆる行動が白日の下にさらされたとき、社会に対して堂々と説明ができるかどうかを指す概念なのです。法律の条文をなぞるだけではなく、社会の常識に照らして恥ずかしくない振る舞いかどうかが問われているといえるでしょう。
組織の中にいると、どうしても独自の文化に染まり、世間の感覚とのズレに気づけなくなるものです。特に関電のような巨大組織では、おかしいと指摘できる人物がいなかった可能性が高いと推察されます。私は、これこそが日本の「忖度文化」の弊害だと感じます。本来、企業は社会の一部であり、密室で何をやっても良いという特権はどこにも存在しません。透明性を欠いた組織は、自浄作用を失い、いずれ社会からの信頼という最大の資産を失うことになるのです。
「おかしい」と感じた直感を信じる勇気
もしあなたが職場で違和感を覚えたら、迷わず声を上げるべきだと出口氏は強調します。自分の常識と照らし合わせて「おかしい」と感じたとき、同僚に相談したり法務部門へ問い合わせたりする行動こそが、停滞した世界を1ミリ動かす原動力になります。特に企業の色に染まりきっていない若手社員の皆さんこそ、その純粋な視点を持って組織を浄化していく使命があるのではないでしょうか。黙って見過ごすことは、厳しい言い方をすれば「悪習の共犯者」になることと同義です。
声を上げることで職を失う恐怖を感じる方もいるかもしれません。しかし、現在の日本は深刻な労働力不足に直面しており、一つの会社にしがみつかなくても活躍の場は無数に存在します。自分の良心を殺してまで、不健全な組織に身を置く必要はないのです。悪習をみんなで変えていく勇気が、巡り巡ってあなた自身と社会を守ることにつながります。一歩踏み出すことは勇気が要りますが、重大な事態を招く前に自浄作用を働かせることが、何よりも大切なのです。
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