ビジネスパーソンにとって、勤務中のネットサーフィンは時に息抜きになるものですが、その「度合い」を巡る司法の判断が大きな注目を集めています。2019年11月29日までに、神戸地裁は給湯器大手「ノーリツ」に勤務する男性社員に対し、会社側が行った降格処分を無効とする画期的な判決を言い渡しました。
この事案は、男性が業務中に会社のパソコンを使用して証券会社のサイトを閲覧していたことが発端です。会社側はこれを重く受け止め、男性を係長級から一般職へと降格させる懲戒処分を下しました。しかし、裁判所はこの判断に対し、「社会通念上の相当性を欠く」という厳しい見解を示したのです。
86日間の閲覧は「懲戒権の乱用」にあたるのか
判決の内容を詳しく見ていくと、男性は2017年6月までの期間に、合計86日間にわたって証券サイトを閲覧していました。1日あたりの時間は15分から17分程度であり、目的は自身の資産運用のためだったと認定されています。この「15分」という時間をどう捉えるかが、本件の大きな分かれ目となりました。
横田昌紀裁判官は、私的な閲覧が常態化していた事実は認めつつも、会社側にサイバーセキュリティー上の具体的な実害が生じていない点に注目しました。さらに、降格という重い罰を与える前に、訓戒や注意といった他の段階的な処分が十分に検討されていなかったプロセスを問題視したのです。
ここで注目すべき「社会通念上の相当性」とは、世間一般の常識に照らして、その処分が妥当であるかどうかを指す法的な基準です。今回の判決では、月額6720円の減給を伴う役職剥奪は、犯したミスに対してあまりに釣り合いが取れていない、いわゆる「重すぎたお仕置き」であると判断されました。
SNSの反応と働き方のモラルを考える
このニュースが報じられると、SNS上では「仕事中に15分程度の株チェックで降格は厳しすぎる」「いや、給料をもらっている以上、私用閲覧は論外だ」といった具合に、意見が真っ二つに分かれています。企業の管理責任と個人の裁量のバランスがいかに難しいかを物語っていると言えるでしょう。
編集者としての私見ですが、今回の判決は「企業の感情的な厳罰化」に釘を刺す意義深いものだと感じます。確かに職務専念義務は重要ですが、即座にキャリアを奪うような処分は、社員のモチベーションを削ぐだけでなく、法的リスクを孕む可能性が高いことを示唆しています。
結局のところ、会社と社員の信頼関係こそが最大のガバナンスなのかもしれません。2019年11月27日付で出されたこの判決により、ノーリツには減額された基本給の差額支払いも命じられました。企業側にとっては、懲戒処分のルールを再確認する重要な教訓となったはずです。
コメント