最近のビジネスシーンにおいて、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を耳にしない日はありません。この概念は、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱したもので、ITの浸透によって人々の生活や社会のあり方が根本から覆される変革を指しています。
SNS上では「単なるIT化と何が違うのか」といった声も散見されますが、本来のDXは単なるツールの導入に留まりません。かつての日本企業は、システム構築を外部業者へ全面的に依存し、経営の根幹としてITを捉えてこなかった苦い歴史があります。今こそ、デジタル時代に即した真の再成長が求められているのです。
1990年頃、世間では「戦略的情報システム(SIS)」という言葉が流行しました。しかし、当時はシステムを販売するための宣伝文句という側面が強く、経営層にその本質は届きませんでした。情報システムを経営戦略の一部として捉えず、現場に任せきりにしていたことが、デジタル化の波に乗り遅れる一因となったのでしょう。
GAFAの躍進と日本企業に立ちはだかる「組織の壁」
1995年にインターネットの商用化が始まると、顧客はリアルタイムで情報をやり取りする新しいパラダイムへと移行しました。この時期に誕生したアマゾンなどの「GAFA」は、デジタルを前提としたビジネスモデルで瞬く間に世界を席巻しています。一方、その頃の日本は依然として組織内の分断に悩まされていました。
最高経営責任者(CEO)と最高情報責任者(CIO)の間には、見えない巨大な壁が存在していたようです。当時のCIOに求められた役割は、既存の経営スタイルを維持しながら、単に業務を効率化するためのシステム改修を行うことでした。経営戦略の核にITが据えられることは、残念ながらほとんどなかったといえます。
編集者の視点から見れば、この「守りのIT」こそが日本企業の機動力を奪ってきた元凶ではないでしょうか。受注側のシステム会社も、顧客の古い体制に合わせた設計を続けてきました。しかし、2019年11月12日現在の日本企業は、DXという旗印のもとでようやく大きな転換期を迎えようとしています。
シリコンバレーから何を学ぶべきか。視点の転換が未来を創る
現在、シリコンバレーには世界中で最も多くの日本企業が拠点を構えています。しかし、多くの駐在員が「現在の業務上の困りごと」を解決するための技術探しに奔走している点は懸念材料です。これでは既存事業の微修正に終わってしまい、ビジネスモデルそのものを刷新するDXの領域には到達できません。
DXを成功させるには、ITが前提の社会だからこそ成立する「新しい事業モデル」をどん欲に学習する姿勢が不可欠です。スタートアップとの連携は、単なる技術調達の場ではなく、未来の経営のヒントを得るための場であるべきでしょう。そのためには、現場の担当者にも経営的な視点が強く求められます。
最終的に決定権を持つ経営トップが自らデジタル変革に関与し、組織のあり方を見直すこと。それこそが、シリコンバレーの知見を日本で花開かせるための絶対条件です。「ITは専門家に任せるもの」という古い常識を捨て去った企業だけが、次の時代を生き残るチケットを手にすることができるでしょう。
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