2019年11月26日、ビジネス界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が席巻していますが、その真の成功を掴むためには単なるIT化を超えた「データ経営革命」が必要です。デロイト トーマツ グループのマネジャー、板倉洋介氏は、社内外の膨大なデータから価値ある「インサイト(洞察)」を導き出し、それを意思決定の基盤とする「インサイトドリブン経営」の重要性を説いています。
インサイトドリブン経営とは、経験や勘に頼るのではなく、高度な分析によって得られた知見を経営の舵取りに活かす手法を指します。SNS上でも「データはあるが活用法が分からない」という悩みの声が多く聞かれますが、板倉氏は、技術やデータそのものよりも、戦略や組織、そしてプロセスをいかに整備するかが変革の成否を分ける決定打になると指摘しています。
アナリティクスが導く価値創出のステップ
経営変革を支える中核ツールとなるのが、データを解析して意思決定に役立てる「アナリティクス」サービスです。これを全社的に浸透させるには、戦略的な「導入」と、秩序を守る「統制」の二つの軸で中身を定義しなければなりません。「導入」のフェーズでは、まずどのような場面でデータを使うかという「ユースケース」を探索し、効果の高いものから順に管理していく手順を整えることが最初のステップとなります。
せっかく高度なシステムを導入しても、現場で使われなければ意味がありません。そのため、ユーザーに対するトレーニングや、活用を通じて得られた「ナレッジ(知識)」を蓄積し、次の施策に活かす仕組みづくりも不可欠です。SNSでは「現場の理解が得られない」という壁にぶつかる企業の事例が散見されますが、こうした地道なナレッジ管理こそが、組織全体でのデータ標準化を後押しするのです。
ガバナンスが加速させる確かな変革
一方で「統制」の側面では、データのガバナンス、つまり統制管理のルール作りが急務となります。あらかじめデータの取り扱い規定を明確にすることで、コンプライアンス(法令順守)や情報セキュリティーを確保しつつ、誰もが安心してデータを利用できる環境が整います。ルールが不明確なままでは、現場はリスクを恐れて萎縮してしまい、せっかくのデータも宝の持ち腐れになってしまいかねません。
板倉氏は、変革を成功させるための心構えとして「志は大きく、スタートは小さく」という言葉を強調しています。まずは小さな成功実績を積み上げ、そこから素早く規模を拡大(スケールアップ)していくのが理想的な姿です。ただし、場当たり的な開始は禁物であり、何を目指し、どこから着手するのかという全体設計を事前に固めることが、手戻りを防ぐ最大の防衛策となります。
私自身の視点から言えば、この「プロセス整備」こそが日本のDXに最も欠けているピースだと感じます。最新のAIツールを導入しただけで満足するのではなく、それを使いこなすための「組織の筋肉」を鍛える作業にこそ、真のリーダーシップが求められています。戦略とテクノロジーを分断させず、板倉氏が示すように各要素を整合させていく姿勢こそが、次世代の経営を切り拓く唯一の道ではないでしょうか。
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