現代のビジネスシーンにおいて、もはや避けては通れない「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の荒波。2019年10月30日、世界屈指の戦略コンサルティングファームであるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の最高経営責任者、リッチ・レッサー氏がその成否を分ける核心について語りました。
かつては夢物語とされた自動運転や、驚異的な精度を誇るAIによる音声・画像認識が日常へと浸透しつつあります。SNS上でも「単なるIT化とDXの違いがわからない」という声が散見されますが、レッサー氏は、これまでの延長線上ではない「事業の本質的な転換」こそが今求められていると警鐘を鳴らしているのです。
「技術ありき」の罠から脱却し、顧客への提供価値を再定義せよ
DXに踏み出す企業の多くが陥りがちな落とし穴として、レッサー氏は「道具としての技術」に固執しすぎる点を指摘しています。優れたITツールを導入すれば組織が自動的に変わるというのは幻想に過ぎません。大切なのは、その道具を使って「どのような新しい価値を顧客に届けるか」という視点を経営の最優先事項に据えることです。
ここで注目したいのが、実証実験(PoC)ばかりを繰り返す「検討中」の状態から抜け出せない企業の多さでしょう。AIなどの先端技術は、試行錯誤の入り口までは容易に辿り着けますが、真の勝負所は事業として継続的に拡大できる「実装」のプロセスにあります。この議論を深めない限り、競合他社に対して優位性を築くことは困難だといえます。
「規模の経済」から「学習の経済」へ!組織のOSを書き換える
これまでの競争軸は、生産設備や人員の多さで圧倒する「規模の経済」が支配していました。しかし、これからの時代はデータを活用して顧客のニーズを素早く汲み取る「学習の経済」へとシフトします。ここで言う「学習」とは、単にデータを蓄積するだけでなく、分析結果を即座に行動へ反映させる「俊敏さ」を指しているのがポイントです。
こうしたスピード感に対応するためには、従来のような上意下達の縦割り組織では限界があります。業界の垣根を超えて共生する「エコシステム(生態系)」、つまり多様なパートナーと連携して価値を生む仕組みづくりが不可欠です。私個人としても、これからのリーダーには「過去の成功体験」を一度捨て去る勇気が求められると感じています。
2019年10月30日時点の情勢を鑑みると、経営者は既存ビジネスの質を高めつつ、業務プロセスをゼロから再構築するという極めて困難な舵取りを強いられています。レッサー氏が説くように、リーダー自身が「自分は何を知らないのか」を問い続ける自己鍛錬こそが、新時代の武器を使いこなすための唯一の道なのかもしれません。
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