日本の金融界を揺るがす重大な事態が再び明らかになりました。2019年5月28日、金融庁は、東京証券取引所の市場区分見直しに関する情報漏洩問題を受けて、野村ホールディングス(HD)と野村証券に対し、業務改善命令を出したと発表しました。金融庁は、野村グループのコンプライアンス(法令順守)意識が著しく欠如していると厳しく批判し、情報管理や規範意識の向上について、抜本的な見直しを強く求めています。さらに、経営陣を含む責任の明確化が必要であるという認識も示されました。
野村証券に対する行政処分は、2012年に発生した上場企業の公募増資を巡るインサイダー取引問題での業務改善命令以来であり、この短期間で再び同様の不祥事を起こしたことは、事態の深刻さを物語っています。野村HDの永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)は2019年5月28日、「法令等順守態勢および内部管理態勢のより一層の強化・充実を図り、再発の防止と信頼の回復に努める」とのコメントを発表しました。
今回の情報漏洩は、東証の市場区分見直しに関する有識者懇談会のメンバーだった野村総合研究所の研究員が、2019年3月に野村証券のストラテジストに対し、東証1部に相当する市場の指定・退出基準となる時価総額に関する非公開情報を漏らし、それが機関投資家に提供されていたというものです。漏洩した内容は個別企業のものではないため、厳密にはインサイダー情報には該当しません。しかし、投資判断に重大な影響を及ぼし得る機密情報であったことから、金融庁は「資本市場の公正性・公平性に対する信頼性を著しく損ないかねない行為」だと断定し、関係者については「証券会社の社員として求められる水準のコンプライアンス意識が欠如していた」と厳しく指摘しました。
過去のインサイダー問題を受け、野村は内部管理体制や社員の規範意識の強化に取り組むとしてきましたが、今回再び不祥事が起きたことを金融庁は重く見ており、「コンプライアンス意識の全社員への徹底が不十分」であると断定し、業務運営の改善が足りないと指摘しています。これに先立ち、野村HDは2019年5月24日に、関係者の社内処分と再発防止策を発表しており、永井グループCEOの月額報酬を3カ月間3割減額するなど、野村証券を含む役員7人の報酬を減らす処分を行っています。
SNS上では、この情報漏洩事件に対し、「野村の体質が変わっていない」「また同じことを繰り返したのか」といった不信感や批判の声が殺到しました。特に、社員の規範意識の欠如が指摘された点について、「トップダウンで企業文化を根本から変えるべきだ」といった、経営陣への厳しい要求も多く見受けられました。
野村は再発防止に向け、不祥事の舞台となった「グローバル・マーケッツ営業二部」を廃止し、情報分析を担う調査部門と、投資家からの注文を執行する部門を分離して、機密情報のやり取りを制限する方針です。しかし、既にビジネスへの影響は顕著に現れており、24日の社内処分発表以降、コマツやホンダファイナンスなどが発行予定の社債の主幹事から野村証券を除外しました。また、一部の機関投資家は、債券や株式の売買注文を停止するなど、信用の喪失が取引に直接響いています。
さらに、2019年には政府が保有する日本郵政株の3次売り出しという、総額1兆円を超える大型案件が予定されていますが、今回の行政処分が出たことで、野村がこの主幹事から外される可能性も浮上しています。野村HDは2019年3月期に1,000億円を超える最終赤字を計上しており、海外部門のコスト削減や国内営業店の店舗統廃合で経営立て直しを急いでいる最中です。この重大な行政処分は、業績回復への道のりに暗い影を落とすだけでなく、不祥事を繰り返さないための企業文化の根本的な変革という、最も困難な課題を突きつけていると言えるでしょう。
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