米中貿易摩擦の核心に迫る!書籍『グローバル・バリューチェーン』が解き明かす国際分業の真実と未来

現代のビジネスシーンにおいて、私たちが手にする製品が「どこの国で作られたか」を正確に答えることは非常に難しくなっています。かつては一つの国で完結していたモノづくりが、今や国境を越えて細分化される「グローバル・バリューチェーン(GVC)」へと進化を遂げました。2019年08月24日に紹介された猪俣哲史氏の著書は、この複雑な国際貿易の仕組みを鮮やかに解き明かす一冊として、大きな注目を集めているのです。

この「グローバル・バリューチェーン」とは、製品の企画から原材料の調達、部品の製造、そして最終的な組み立てに至るまでの全工程が、世界中の最適な拠点に分散される仕組みを指します。情報通信技術の飛躍的な向上により、企業は最も効率的な場所で各工程を行うことが可能になりました。その結果、低賃金な国々が組み立てを担い、東アジア、特に中国が急速な産業の高度化を成し遂げたのは、記憶に新しいところでしょう。

SNS上では、こうした現状に対して「iPhoneの裏側に刻まれた『Designed in California, Assembled in China』の文字こそがGVCの象徴だ」といった納得の声や、「自国の仕事が奪われる不安の正体がようやくわかった」という切実な意見が飛び交っています。従来の「先進国は資本、途上国は労働」という単純な住み分けが崩壊したことで、世界は新たな対立の時代に突入しているといえるのではないでしょうか。

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付加価値で見る貿易摩擦の正体と環境への新たな責任

トランプ米政権が中国に対して厳しい貿易赤字の是正を求めているニュースが連日報じられていますが、本書は「付加価値ベース」という斬新な視点を提示します。例えば中国から米国へ輸出される製品には、実は日本や韓国製の高機能な部品が多く含まれています。経済協力開発機構(OECD)の試算によれば、この付加価値で貿易額を見直すと、世界貿易の規模は2割ほど縮小し、中国の対米輸出額も大幅に減少するというから驚きです。

かつての日米貿易摩擦は、自動車などの特定産業に限定された問題でしたが、現在の米中対立は構造が全く異なります。先進国が持つ「知的資本」と、途上国の「非熟練労働」が複雑に結びついた結果、特定の業界を超えて広範囲に雇用への影響が及んでいるのです。こうした構造的な変化が、多くの労働者にとって再就職を困難にさせているという著者の指摘は、現代社会が抱える痛切な課題を浮き彫りにしています。

さらに興味深いのは、この視点が地球環境問題にも一石を投じている点でしょう。従来、二酸化炭素の排出責任は「生産した国」にありましたが、もしこれを「消費した国」の責任として捉え直せば、先進国と途上国の排出バランスは劇的に逆転します。編集者としての私の意見ですが、これからの時代は製品の便利さだけでなく、その裏側にある「見えない付加価値」や「環境負荷」に対しても、私たち消費者がより自覚的になるべきでしょう。

猪俣哲史氏は、ジェトロ・アジア経済研究所の上席主任調査研究員として活躍する国際貿易の第一人者です。専門的な知見をベースにしながらも、現在の国際情勢をこれほど平易に語れる筆致には脱帽せざるを得ません。ビジネスの最前線に立つ方々はもちろん、変わりゆく世界経済のルールを知りたいすべての人にとって、2019年の今、最も読むべき価値のある一冊であると確信しています。

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