IoT(モノのインターネット)によるイノベーションは、もはや大企業だけの専売特許ではありません。自社の業務プロセスや生産現場の課題解決にIoTを活用する流れが、中小企業の間でも急速に進展しています。かつては高額な投資が必要でしたが、現在は安価な計測機器やクラウドサービスを活用すれば、大きな初期投資なしで改革に着手できる時代となったのです。SNSでは「中小にもチャンスが来た」「いよいよ現場が変わる」と、この技術革新への期待が高まっています。
この変化を可能にした技術的な進化の一つが「デジタルツイン」の実現です。「デジタルツイン」とは、工場などの生産現場の状況を、コンピューター上の仮想空間にそっくりそのまま再現(双子化)し、様々な分析や最適な制御のシミュレーションを可能にする技術のことです。また、システム構築においても、従来の特定ベンダーに依存した垂直統合型から、安価で共通の基盤である「汎用IoTプラットフォーム」を活用した水平分業型へと移行しました。これにより、企業間の連携が容易になり、「バリューチェーン」(一連の企業活動の流れ)全体の改善が可能になったのです。
北陸先端科学技術大学院大学の内平直志教授(当時)が取材した中小企業の成功事例からは、共通する4つの重要なポイントが見えてきます。第1に、IoTの導入自体を目的とするのではなく、解決すべき課題や目指すビジョンを明確に持つことが成功の絶対条件です。第2に、現場からの反発があっても成果が出るまで徹底して進める、経営幹部の深い理解と強いリーダーシップが欠かせません。
第3に、汎用のツールや「クラウド」(インターネット経由で利用できるサービス)を柔軟に活用し、現場で試行錯誤を繰り返しながら最適なシステムを開発していることです。そして第4のポイントは、自社で成功したシステムを他の企業にも提供・共有することで、活用知識やノウハウを社会全体で集約し、共同受注などにもつなげていることです。これこそが、企業を単体で終わらせない「つながる工場」の未来像であると言えるでしょう。
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