人口減少社会の未来図。「男性稼ぎ手モデル」を捨てよ。東大教授が提唱する「包摂型社会」への積極介入論

日本の総人口は2008年以降減少し続け、2050年ごろには1億人を割り込む見通しです。2018年9月15日時点の高齢化率は28.1%と過去最高を記録するなど、超高齢社会が必然の未来となりつつあります。この危機を乗り越え、持続可能な社会を築くために、東京大学の白波瀬佐和子教授は「包摂型社会」(インクルーシブ社会)への大胆な転換を提唱しています。SNSでも「日本の常識を変えないと」「もう家族だけで問題を抱えられない」と、その切実な提言に共感が広がっています。

人口減少の根本原因の一つが少子化ですが、その背景には、1960年代の成功体験に基づく「男性1人稼ぎ手モデル」という固定的な「ジェンダー(性差)役割分業」体制があります。しかし、非正規雇用率の増加や若年市場の悪化が進む現在、このモデルは崩壊しています。結果として、2017年の初婚平均年齢は男性31.1歳、女性29.4歳に上昇し、2015年時点の50歳時未婚率も男性23.4%、女性14.1%と激増したのです。

従来の制度設計では、医療や介護などの社会リスクの第一義的な対応を家族が担うことが前提とされてきましたが、その機能は限界に達しています。私たちは、この負の遺産を解消するために、すべての人々に機会を公平に提供する「包摂型」の社会モデルを目指さなければなりません。その実現には二つの重要な柱が必要だと白波瀬教授は指摘しています。

一つ目の柱は、未来社会の担い手となる若年層を中心とした「人的資源へのさらなる投資」です。これまでの日本企業が特定企業内で行ってきた限定的な投資ではなく、超高齢社会という未知の課題に立ち向かうため、社会規模での広範な投資を展開すべきです。特に、教育の「評価軸を複線化・多様化」し、一つの基準で優劣を決めず、様々な価値観を受け入れる仕組みを構築することが、斬新な発想を生み出す鍵となるでしょう。

二つ目の柱は、「既存の格差への能動的な介入」です。過去に保障されなかった機会の不平等を正すため、期間を限ってでも、恵まれなかった層(少数派)に優先的にチャンスを提供する「積極的介入」が必要だと説いています。例えば、「女の子なのに理数系が好き」といった、既存のジェンダー観から否定的に見られがちな才能を社会が積極的に承認・支援する環境を構築しなければなりません。

この能動的な介入こそが、自然の成り行きでは変わらない社会の変革を加速させる手段となります。経済協力開発機構(OECD)諸国で際立って低い日本女性の管理職の割合も、過去の機会の不平等を検証し、積極的に是正することでしか改善できないでしょう。超高齢社会の未来は、女性、若者、障害者といった「少数派」の持つ潜在能力に対して、社会全体が期待し、投資することから始まるのです。

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