1922年に古代エジプトの王墓を発見したハワード・カーターは、著書「ツタンカーメン発掘記」の中で、若き少年王と美しき王妃が過ごした日常に深く心を寄せました。黄金の輝きに満ちた副葬品の数々よりも彼の魂を揺さぶったのは、そこに刻まれた夫婦の情愛だったのです。
玉座や厨子(ずし)と呼ばれる仏像などを安置する箱状の調度品には、二人の仲睦まじい光景が鮮やかに描かれています。王妃が王の襟元に香水を振りかけ、身だしなみを整える献身的な姿や、狩りに興じる王にそっと矢を手渡す場面など、そこには現代と変わらぬ家族の温もりが存在しています。
当時の政治情勢は、影の権力者の存在により不安定だったという説もあります。しかし、政務に疲れ果てた王の腕を王妃が優しく支える描写を見れば、二人の絆が本物であったと確信できるでしょう。3000年という膨大な時間の隔たりを超え、愛の記憶は今もなお色褪せることはありません。
SNS上では、このロマンあふれるエピソードに対して「黄金よりも二人の絆に感動する」「歴史の向こう側に人間味を感じる」といった声が上がっています。単なる歴史的遺物としてではなく、一組の夫婦の物語として捉えることで、多くの人々が深い共感を寄せているのが印象的です。
2020年オープンの新博物館と日本の観光資源へのヒント
エジプトでは、2020年にカイロ近郊で「大エジプト博物館」の開館が予定されています。ここでは約5000点にのぼるツタンカーメンの副葬品が一堂に会する予定であり、黄金のマスクと並んで、王夫妻の愛を象徴する品々も大きな注目を集めるに違いありません。
私は、この「物語性」こそが観光の核心であると考えます。豪華な展示物そのものの価値以上に、そこにある背景や感情が人々の足を運ばせるのです。日本においても、訪日観光客を魅了するためには、こうした心に響く地域のストーリーをもっと積極的に発信していくべきでしょう。
例えば「遠野物語」に代表される伝承や、各地に根付く暮らしの知恵などは、外国人観光客にとって非常に魅力的なコンテンツになるはずです。ツタンカーメンの棺には、王妃が捧げたとされる色鮮やかな花束が置かれていました。その小さな花束が、何よりも強く見る者の心を捉えて離さないのです。
2019年12月30日現在、観光大国を目指す日本にとって必要なのは、単なる箱モノの整備ではありません。エジプトの少年王が教えてくれたように、歴史の中に息づく「人の思い」を丁寧に紡ぎ、観光客を物語の世界へと引き込む戦略を、官民一体となって練り上げていくことが求められています。
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