2019年12月04日、金融界を揺るがす大きな動きが表面化しました。フランス中央銀行のフランソワ・ビルロワドガロー総裁はインタビューに応じ、欧州においても中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入を検討し始める方針を表明したのです。これは、従来の紙幣や硬貨といった物理的な通貨に代わり、中央銀行が価値を保証するデジタル形式の法定通貨を指します。
SNS上では「ついにユーロもデジタル化か」「リブラへの対抗策だろう」といった期待と警戒が入り混じった声が相次いでいます。ビルロワドガロー総裁は、新しい通貨の形において最も重要なのは「信頼」であると断言しました。利便性という名の技術革新のために、金融システムの根幹である安全性や信頼を犠牲にすることは決して許されないという強い決意が伺えます。
特に、米フェイスブックが主導するデジタル通貨「リブラ」構想に対しては、厳しい姿勢を崩していません。マネーロンダリング(資金洗浄)対策を含め、最高水準の金融規制を遵守することが絶対条件であると指摘しました。民間企業が発行する通貨が、国家の通貨主権や経済の安定を脅かす可能性について、主要7カ国(G7)が定めた厳格な基準に従うよう求めています。
一方で、中央銀行が自ら発行するCBDCについては、リブラとは切り離してその有用性を評価すべきだとの考えです。CBDCには、金融機関や企業間での決済を効率化するだけでなく、広く家計や中小企業まで利用対象を広げるかという議論もあります。効率性と安全性をどのように高い次元で両立させるかが、今後の欧州における研究の大きな焦点となるでしょう。
欧州経済の停滞を打破する「次の一手」とは
欧州経済の減速が懸念される中、総裁は現在の欧州中央銀行(ECB)による金融政策についても言及しました。これまでは、マイナス金利や資産購入、さらには将来の政策方針を事前に示す「フォワードガイダンス」などの手段を組み合わせて対応してきました。しかし、総裁は「金融政策だけでは限界がある」と、その課題を率直に認めています。
そこで重要となるのが、各国による「財政出動」です。これは政府が公共事業などを通じてお金を市場に流し、景気を下支えすることを指します。総裁は特にドイツの名を挙げ、「景気減速が顕著でありながら、最も財政に余裕がある国だ」と指摘しました。これまで慎重だったドイツに対し、積極的な財政政策で欧州全体の景気を牽引するよう促した格好です。
また、ECBが掲げる「2%」のインフレ目標についても、戦略的な見直しを行う方針を明らかにしました。単に数字をいじるのではなく、家計や企業が将来の物価をどう予測しているかという「インフレ期待」を正確に把握することが重要だとしています。より現実の経済活動に即した、実効性のある物価安定の定義を模索する時期に来ているといえるでしょう。
英国のEU離脱問題についても、予断を許さない状況が続いています。離脱協定を結ぶだけでは不十分であり、その後の貿易協定が不透明なままでは経済的な不安は解消されません。デジタル通貨という未来への布石を打ちつつ、目の前の景気不安や政治的混乱にどう対処するか。欧州金融界のリーダーたちが、今まさに大きな決断の時を迎えています。
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