世界経済を牽引する日米両国の新たな関係が、ついに幕を開けます。2019年12月04日、参議院本会議において日米貿易協定が承認され、2020年01月01日の発効が正式に決定しました。世界1位と3位の経済巨頭が手を取り合い、多くの物品で関税を削り落とすこの試みは、停滞するグローバル経済に活力を与える起爆剤として、大きな期待を集めているところです。
SNS上では「牛肉が安くなるのは嬉しい」といった消費者目線の歓迎の声が上がる一方で、一部の農家からは「海外勢との競争が激化する」と不安を募らせる投稿も散見されます。今回の協定により、日本は牛肉や豚肉といった農畜産物の関税を、すでに運用されているTPP(環太平洋経済連携協定)と同等の水準まで引き下げることになりました。食卓が豊かになる一方で、国内農業の守り方が問われる局面です。
経済活性化への光と、立ちはだかる「自動車関税」の壁
対する米国側は、エアコン部品や燃料電池など、日本の得意とする工業製品の関税を撤廃あるいは削減する方針を示しています。ここで言う「関税」とは、輸入品にかける税金のことで、これを下げることで価格競争力を高め、輸出を促進する狙いがあります。政府の試算では、この協定が日本の実質GDPを約0.8%押し上げるとされていますが、これには大きな「条件」が隠されていることを忘れてはなりません。
実は、日本にとって最大の懸念材料である「自動車および部品」の関税撤廃については、今回先送りされてしまいました。WTO(世界貿易機関)の国際的なルールでは、自由貿易協定において約90%の関税撤廃が求められています。現状のままでは、この基準に抵触する恐れがあるため、日本政府は米国に対して粘り強い交渉を続ける必要があります。自動車産業は日本の大黒柱ですから、ここでの譲歩は許されないでしょう。
また、今回の交渉で日本が「数量規制」や「為替条項」を回避できた点は、外交上の大きな成果と評価できます。為替条項とは、輸出を有利にするために国が意図的に通貨安へ導くことを禁じるルールのことですが、これが盛り込まれると、日本の金融政策が制限されるリスクがありました。トランプ政権が他国に強硬な姿勢を見せる中、こうした「実利」を守り抜いた日本の立ち回りは、一定の評価に値すると私は考えています。
デジタル時代の新ルールと、これからの日米交渉の行方
2020年01月01日には、物品だけでなく「日米デジタル貿易協定」も同時にスタートします。これは、企業に対してデータの開示を無理やり要求することを禁じるなど、現代のネット社会に即した先進的なルールです。国境を越えたデータのやり取りがビジネスの鍵を握る今、日米が先んじて透明性の高いルールを構築したことは、世界的なスタンダード作りにおいて非常に重要な一歩となるに違いありません。
しかし、安倍政権によるこれまでの国会審議では、国民の不安を完全に取り除けたとは言い難い状況です。鉄鋼やアルミニウムに課されたままの高関税措置など、未解決の課題は山積しています。日米関係は、この協定の発効で「終わり」ではなく、ここからが「真の進化」を問われる始まりです。包括的で質の高い自由貿易を目指し、さらなる交渉の進展を強く望みます。
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