2019年10月28日の米株式市場は、投資界に大きな衝撃を与えました。機関投資家が最も重視する指標である「S&P500種株価指数」が、約3カ月ぶりに史上最高値を塗り替えたのです。米中貿易協議の進展への期待や、予想を上回る企業決算が追い風となり、投資家の間ではリスクを取って利益を狙う「リスク選好」の動きが強まっています。
この快挙に即座に反応したのがトランプ米大統領です。取引開始直後の最高値更新を受け、自身のSNSで「雇用や確定拠出年金(401k)にとっての勝利だ」と自画自賛の投稿を行いました。大統領自ら相場のムードを盛り上げる姿は象徴的ですが、SNS上の反応は冷静です。「お祭り騒ぎは今だけではないか」という、慎重な声も少なくありません。
立ちはだかる「3000ポイントの壁」と既視感の正体
市場が手放しで喜べない理由は、過去の苦い経験にあります。2018年以降、指数は最高値を更新するたびに大きな調整、つまり価格の下落局面を迎えてきました。投資家の間では、心理的節目である「3000ポイントの壁」を突き抜けて上昇し続けることへの懐疑心が広がっています。多くの専門家が、現在の状況に強い「デジャブ(既視感)」を指摘しています。
具体的には、前回最高値を記録した2019年7月26日との類似性が顕著です。当時は直後の8月に米中摩擦が激化し、景気減速への不安から相場は暗転しました。今回も米連邦公開市場委員会(FOMC)による0.25%の利下げ期待が相場を支えていますが、パウエルFRB議長が「利下げの打ち止め」を示唆すれば、一気に売りが加速するリスクを孕んでいるでしょう。
私は、現在の株高は多分に「機械的」な側面が強いと感じています。AIを用いたアルゴリズム取引が、予想を上回る決算データに反応して自動的に買いを入れているに過ぎない側面があるからです。企業が示す将来の業績見通し(ガイダンス)は、過去平均に比べて驚くほど弱気です。経営者層が慎重な姿勢を崩さない中での最高値更新は、砂上の楼閣に近い危うさを感じさせます。
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