2019年07月27日、今年も夏の風物詩である「土用の丑の日」がやってきました。香ばしいタレの香りに誘われてウナギを頬張る時間は至福のひとときですが、その裏側でウナギを取り巻く環境はかつてないほどの危機に直面しています。食卓を彩る主役が、実は絶滅の淵に立たされているという現実を、私たちは直視しなければならない局面に立たされているのでしょう。
ウナギ養殖に欠かせない「シラスウナギ」と呼ばれる稚魚の国内漁獲量は、2019年において3.7トンという驚くべき低水準を記録しました。これは前年比で6割も減少しており、過去最低を更新する極めて深刻な事態です。1960年代の最盛期と比較すると、その量はわずか60分の1にまで激減しており、かつては当たり前のように川を遡っていた命の輝きが、今では風前の灯火となっていることが分かります。
こうした供給不足は価格の高騰を招き、シラスウナギは今や「白いダイヤ」と称されるほど高価な存在となりました。2018年には1キログラムあたり300万円に迫る取引価格がつき、2019年も200万円を超える高値が続いています。この価格は、貴金属であるプラチナにも匹敵する驚異的な数字であり、その希少価値ゆえに密漁や不正な流通が後を絶たないという負の連鎖を生み出しているのです。
SNS上では「高すぎて手が届かない」という嘆きの声だけでなく、「このまま食べ続けて絶滅させていいのか」という倫理的な問いかけを投じるユーザーが急増しています。特に、本来は漁獲実績がほとんどないはずの香港を経由し、台湾などから輸出規制をくぐり抜けて日本へ流入する不透明なルートに対しては、多くの消費者が不信感を募らせており、業界全体の透明性を求める声が日に日に強まっている状況です。
資源枯渇の悪循環を断つための国際連携と技術革新
ウナギ激減の背景には河川の環境変化も挙げられますが、専門家は最大の要因として「過剰な漁獲」を指摘しています。日本だけでなく中国などの近隣諸国でも消費が拡大している現在、一国だけの努力では限界があるでしょう。日本がリーダーシップを発揮し、アジア各国・地域に対して厳格な漁獲規制の遵守を働きかけるとともに、不正な流通を徹底的に根絶するための包囲網を築くことが急務です。
現在の養殖は、天然の稚魚を捕まえて育てる手法に依存していますが、卵から成魚まで育てる「完全養殖」の技術も注目されています。これは人工的に生まれた卵を孵化させ、次世代の親にするサイクルを確立するものですが、2019年時点ではまだ試験段階であり、コスト面での課題も残っています。この技術が商業ベースで安定供給されるようになれば、天然資源への負荷を劇的に減らす大きな希望となるに違いありません。
私は、伝統を守ることと資源を守ることは決して対立するものではないと考えています。例えば、ウナギに近い食感を楽しめるナマズなどの「代替魚」を賢く活用し、天然ウナギへの依存度を意識的に下げることは、賢明な消費者のあり方と言えるでしょう。もし密漁や不正輸入に歯止めがかからなければ、ワシントン条約による国際的な取引規制という厳しい未来が、すぐそこまで迫っています。
私たちの世代で「ウナギを食べる文化」を終わらせないためには、今こそ供給側も消費者も一丸となって、この悪循環を断ち切る決断を下すべき時です。2019年07月27日のこの記念すべき日に、単に美味しさを楽しむだけでなく、ウナギたちの未来に想いを馳せる人が一人でも増えることを願って止みません。持続可能な「食」の形を模索することが、私たちに課せられた次世代への責任なのです。
コメント