石川県金沢市が世界に誇る伝統工芸、金箔。その国内シェアは実に99%を占めていますが、時代の変化とともに需要が減少し、職人の高齢化という厳しい現実に直面しています。そんな業界に新風を吹き込んでいるのが、2014年に設立された「ゴールデンバロール」です。代表の諸江健太氏は、金箔卸業の家に生まれながら元Jリーガーという異色の経歴を持ち、その情熱で伝統の再定義に挑んでいます。
同社が特に注力しているのは、ユネスコ無形文化遺産への登録も期待される伝統の「縁付(えんつけ)」製法です。これは手漉きの和紙を使い、職人が一枚ずつ丁寧に仕上げる技法を指します。機械で量産される「断切(たちきり)」とは異なり、極限まで薄く延ばされた箔は、下に隠れた素材の質感を見事に引き立てるのです。この薄さこそが、現代の空間デザインにおいて唯一無二の価値を生み出しています。
SNSでは「金箔なのに派手すぎず、上品で温かみがある」「木目が透ける金箔なんて初めて見た」といった驚きの声が広がっています。成金的な煌びやかさではなく、素材の呼吸を感じさせるような奥ゆかしい輝きが、本物志向のユーザーに刺さっているのでしょう。アスリート出身の諸江社長らしい、伝統を「守る」だけでなく「攻め」の姿勢で活用する発想が、多くの共感を呼んでいるようです。
建材と金箔の融合!高級レストランが認めた「魅せる」職人技
具体的な成果として、2018年には大阪市の高級ホテル「セントレジスホテル大阪」の鉄板焼きレストランに採用されました。愛知県のフローリング材メーカーと連携し、木材の模様に沿って金箔を施した床材は、天然の木目を美しく浮かび上がらせます。また、レザー素材に箔を散りばめた独自の壁材も開発されました。これらは精密な印刷機では再現不可能な、職人の手仕事が生み出す繊細な凹凸が魅力です。
さらに、照明器具への応用も注目を集めています。金箔は光にかざすと実は青緑色に透けて見えるという特性を持っており、これを利用して光の表情が変化する幻想的な空間を演出しました。この照明は大阪市内のタワーマンションにも導入され、都市生活に伝統の彩りを添えています。10,000分の1ミリとも言われる極薄の層が、光の透過という新たな価値を証明したのです。
2019年3月期の売上は約1000万円とまだ規模は小さいものの、諸江社長の視線は既に世界を向いています。2020年には中国でのショールーム展示や欧米への進出も計画されており、ニッチな市場から世界へと「KANAZAWA」ブランドを広めようとしています。伝統工芸を単なる保存対象にせず、現代のライフスタイルに溶け込ませる彼らの挑戦は、日本のモノづくりの未来を明るく照らしているように感じます。
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