埼玉県が今、新たな特産品として「ピーカンナッツ」の栽培普及に本腰を入れています。2019年11月21日、県は高齢化による担い手不足や、活用されないまま放置されている遊休農地の増加という深刻な課題を解決するため、この魅力的なナッツの生産を強力に後押しする方針を固めました。
SNS上では「埼玉産のピーカンナッツなんてお洒落!」「殻が剥きやすいなら家でも食べやすそう」といった期待の声が早くも上がっています。ピーカンナッツは北米原産のクルミ科の落葉高木で、脂肪分が豊富で「バターの木」とも呼ばれるほど濃厚な味わいが特徴的な食材です。
この取り組みの背景には、2015年時点で農家数が5年前より8700戸以上も減少したという厳しい現状があります。2017年には耕作放棄地が3300ヘクタールに達しており、管理が容易な作物の導入が急務でした。ピーカンナッツは、まさにその救世主といえる存在なのです。
驚きの収穫しやすさと「300年」続く収益の柱
農家の方々にとって最大の魅力は、その収穫の驚くべき手軽さにあるでしょう。実が熟すと自然に地面へ落ちるため、基本的には熊手で集めるだけで作業が完了します。これなら高齢の方でも身体に大きな負担をかけず、無理なく農業を続けることが可能になるはずです。
さらに、この樹木は驚異的な寿命を誇ります。実を付けるまでに5年から7年ほどの時間は要しますが、一度収穫が始まれば300年以上も実を付け続ける個体もあるといいます。まさに、次世代、その先の世代まで受け継ぐことができる、息の長い資産になる可能性を秘めています。
市場価値の高さも見逃せません。2018年産の取引価格は1キログラムあたり2500円に達し、アーモンドの1000円やクルミの1500円前後と比較しても圧倒的な高値で取引されています。需要も右肩上がりで、2018年の輸入量は10年前の約2.4倍にまで膨れ上がっています。
産学連携で挑む「ブルーオーシャン」への戦略
埼玉県は2019年11月12日に第1回講習会を開催し、生産者たちが実際に収穫や試食を体験しました。国内での栽培事例はまだ極めて稀なため、県は「ブルーオーシャン(競合のいない未開拓市場)」を狙うべく、東京大学などの専門機関とも連携を深めていく構えです。
現在はオーストラリアから苗木を輸入し、JA南彩が窓口となって供給体制を整えています。これまでヨーロッパ野菜の普及などで実績を上げてきた埼玉県の「ニッチなフードビジネス」戦略が、このピーカンナッツという新たな武器によって、さらに加速していくことは間違いありません。
個人的には、単なる農産物としてだけでなく、埼玉発の高級スイーツブランドとしての展開も非常に楽しみです。耕作放棄地が美しいナッツの森に変わり、そこから生まれる一粒が地域の経済を潤す。そんな持続可能な農業のモデルケースが、ここ埼玉県から誕生しようとしています。
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