「ラッパのマークの正露丸」でお馴染みの大幸薬品が、今、驚異的な成長を遂げています。2019年11月8日に発表された2019年4~9月期の連結決算によると、営業利益は前年同期比で52%増という凄まじい数字を叩き出しました。SNSでは「正露丸のイメージが変わった」「クレベリンの勢いが止まらない」と、伝統企業の鮮やかな変身ぶりに驚きの声が広がっています。
この快進撃の立役者は、異業種から集結した7人の「プロ役員」たちです。彼らは全員、より規模の大きな企業で実績を積んできたスペシャリスト集団。自らも医師としての経歴を持つ柴田高社長が、その「磁力」で外部の優秀な人材を惹きつけました。同社の2019年4~9月期の売上高は前年比15%増の43億円に達し、通期では2年連続で過去最高を更新する112億円を見込んでいます。
「人類を救う」情熱が生んだクレベリンの爆発的ヒット
業績を牽引しているのは、除菌消臭剤の「クレベリン」です。現在、売上の約5割を占めるまでに成長しました。柴田社長はスカウトの際、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』を引き合いに出し、「世界中に広まれば手術の100万倍の人を救える」と大真面目に語ります。この熱意に打たれ、大手からの高額オファーを蹴って入社を決めた役員も少なくありません。まさに情熱が人を動かし、ビジネスを加速させているのです。
マーケティング戦略も劇的に変化しました。花王出身の長田賢俊執行役員は、ターゲットを「絶対に病気になれない妊婦や受験生」に凝縮。予備校風の広告展開や、あえて象徴的なラッパのマークを外したスタイリッシュなパッケージへの刷新を断行しました。その結果、当初2年かけて達成するはずだった販売2割増という目標を、わずか1年で成し遂げるという離れ業を演じてみせたのです。
ブルーオーシャンを狙う異業種の視点と組織の柔軟性
「ブルーオーシャン」とは、競合相手のいない未開拓市場を指します。米ゼネラル・エレクトリック出身の関真一執行役員は、この視点で業務用市場を開拓。自動車販売店向けに、短時間で車内を除菌できる機器を売り込むなど、既存の枠にとらわれない施策を次々と打ち出しました。社内からの反発もありましたが、市場調査という客観的な裏付けを盾に、柴田社長が強力な後ろ盾となってこれらを推進しました。
大幸薬品は現在、新卒採用を廃止し、正社員の6割を中途採用が占めるという、日本の伝統企業としては極めて稀な組織形態に進化しています。編集者の視点から見れば、創業家のリーダーシップと外部の専門性がこれほど高次元で融合している例は珍しく、まさに「伝統と革新」の理想形といえるでしょう。今後はより実績を重視した報酬制度の導入も予定されており、ラッパのマークの輝きはさらに増していきそうです。
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