2019年8月に常磐自動車道で発生した、世間を震撼させたあおり運転殴打事件。この痛ましい事件の裏側で、全く無関係な女性が犯人の同乗者であるという虚偽の情報がネット上に氾濫しました。身に覚えのない誹謗中傷を受けた東京都内の会社経営の女性は、名誉を著しく傷つけられたとして、元愛知県豊田市議の原田隆司氏に対し110万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
この注目すべき裁判の第1回口頭弁論が2019年12月9日、東京地方裁判所にて開かれました。口頭弁論とは、裁判官の前で当事者が互いの主張を述べ合う公的な手続きのことです。原田氏側は今回の法廷において、女性側の請求を退けるよう求める答弁を行い、全面的に争う構えを見せています。元公人という立場でありながら、情報の真偽を確かめずに拡散に加担した責任が厳しく問われることになるでしょう。
訴状の内容によると、原田氏は画像共有アプリのインスタグラムに掲載されていた女性の顔写真を自身のフェイスブックに引用。あろうことか「早く逮捕されるよう拡散お願いします」といった言葉を添えて投稿したとされています。SNS上では「政治家が裏取りもせずにデマを流すなんて信じられない」「一度広まった恐怖は消えない」といった、無責任な拡散行為を非難する声が次々と上がっています。
インターネットにおける「名誉毀損」とは、公の場で具体的な事実を挙げて他人の社会的評価を低下させる行為を指します。たとえ善意のつもりであっても、誤った情報を広めることで誰かの人生を狂わせる「ネット私刑」は許されるものではありません。情報を発信する際は、その指先一つが凶器になり得るという自覚を持つことが、現代社会を生きる私たちに求められる最低限のマナーではないでしょうか。
編集者の視点として申し上げれば、今回の訴訟はSNS時代の情報リテラシーを問う極めて重要な一石だと確信しています。デマを鵜呑みにし、正義感に駆られて拡散する「善意の加害者」は後を絶ちませんが、法的な責任からは逃れられません。2019年12月9日の弁論を皮切りに、司法がどのような判断を下すのか。ネット社会の健全化に向けた大きな分かれ道になることは間違いないでしょう。
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