香川県と岡山県の島々を舞台に、世界中の人々を魅了するアートの祭典「瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)2019」の春会期が、三十一日にわたる日程を終え、二〇一九年五月二十六日に幕を下ろしました。SNS上では「美しい島の風景とアートの融合に心を洗われた」「春の瀬戸内、最高だった。夏も絶対に行く!」といった感動の声が溢れており、その盛況ぶりがうかがえます。
特に、春会期のみの参加となった沙弥島(香川県坂出市)では、地元住民ら約三百人が集まり、クロージングイベントが開催されました。坂出市の綾宏市長が「大勢の人に来ていただいた」と手応えを語り、二〇一九年五月二十七日の会見で香川県の浜田恵造知事も「事故や混乱もなく無事に終えることができた」と安堵の表情を見せるなど、行政側も大きな成果を感じているようです。祭典は早くも、次の夏会期(二〇一九年夏)へとバトンをつなぎます。
しかし、私がこの閉幕のニュースで最も心に響いたのは、アーティスト・藤本修三氏がイベントで述べた「島がもっている独特の風景、これこそが本来のアートという気がする」という言葉です。これこそが、瀬戸芸の成功の本質ではないでしょうか。私たちはつい、島々に設置された奇抜な「アート作品」そのものに目を奪われがちです。ですが、それらは主役ではないのかもしれません。
私自身、アート作品とは、私たちが見過ごしてきた島の「日常」や「風景」の価値を再発見させてくれる、「触媒」のような存在であるべきだと考えています。作品があるから島に行くのではなく、作品をきっかけに島を訪れ、その島の固有の美しさに気づかされる。沙弥島での藤本氏の言葉は、アートと地域が共生する最良の形を示してくれたように思います。この「気づき」こそが、瀬戸芸が私たちに与えてくれる最大の「作品」なのでしょう。
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