大学入試改革の迷走と英語民間試験導入見送りの波紋:2024年度実施への「期限ありき」な議論に潜む危うさ

2019年11月1日、教育界を揺るがす大きな発表がありました。萩生田光一文部科学相が、2020年度から予定されていた大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用見送りを表明したのです。わずか数日前の2019年10月27日、大手予備校の河合塾が東京都内で開催した説明会では、多くの保護者や高校生が新試験の解説に真剣な面持ちで聞き入っていました。まさかその直後に、これまでの準備が白紙に近い状態へ戻るとは誰も予想だにしなかったことでしょう。

SNS上では「受験生を振り回しすぎている」「不公平な制度が止まって安心した」といった安堵の声と同時に、「今までの対策は何だったのか」という憤りの声が渦巻いています。実際に、私立の立教大や公立の首都大学東京(東京都立大)など、民間試験を積極的に導入し自前の英語試験を縮小する方針だった大学も少なくありません。すでに4年制大学の約7割にあたる538校が活用を決めていただけに、各大学は入試方式の再検討という重い課題を突きつけられています。

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「期限ありき」の進め方が招いた不信感と教育現場の混乱

文部科学省は、今後1年を目途に検討会議で議論を尽くし、2024年度には新たな英語試験を実施するとしています。しかし、このスケジュール設定には「また期限ありきで議論が進むのではないか」という危うさが漂っています。テスト学の権威である南風原朝和・東京大名誉教授は、1年という期間に縛られて結論を急ぐべきではないと警鐘を鳴らしています。入試の変更は2年前には告知するというルールを考慮すると、残された時間は決して多くありません。

これまでの改革論議を振り返ると、2016年3月に最終報告が出された後、議論の場が非公開へと移り、慎重派の意見が届きにくい環境で民間試験の活用が決定された経緯があります。同じ轍を踏まないためには、新たな検討会議において、幅広い視点を持つ委員の選定と、何よりも議論の透明性を確保することが不可欠です。密室での決定は、教育の根幹である「公平性」を損なうだけでなく、受験生や保護者からの信頼を二度と得られなくなるリスクを孕んでいます。

英語4技能の測定は共通テストに本当に必要なのか

そもそも、50万人規模が受験する大学入試センター試験は、トラブルを防ぐ安定性と公平性が極めて高いインフラです。2019年10月上旬にも、都内の高校ではリスニング機器の点検が厳格に行われていました。多くの高校現場からは、この安定した枠組みの中で「読む・聞く・書く・話す」の英語4技能を測る試験を作成してほしいという声が上がっています。しかし、個人の発声や態度まで関わる「話す」力の測定を、大規模試験で公平に行うのは至難の業です。

私は、無理に共通テストですべてを完結させようとする姿勢に疑問を感じます。かつて改革をリードした学識者の中にも、共通テストでは3技能で十分だと考えていた方がいた事実は重いものです。すべての受験生に一律で高度なスピーキング試験を課すことが、果たして真の英語力向上につながるのでしょうか。共通テストで測るべき基礎力と、各大学が独自に求める専門的な能力をどう棲み分けるのか。この根本的な問いに立ち返ることこそ、今最も求められています。

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