2019年という1年は、世界中の人々が「分断」という言葉を肌で感じる、非常にスリリングかつ不安定な月日の連続でした。2018年から尾を引く米中の関税合戦は、私たちの想像を超える規模へと膨れ上がり、国際社会のパズルを複雑に塗り替えてしまったのです。SNS上でも「iPhoneの値段が上がるのでは?」「冷戦の再来だ」といった不安の声が絶えず、経済の先行きに対する不透明感が世界を包み込んだ1年であったと言えるでしょう。
特に注目すべきは、トランプ政権下の米国が仕掛けた対中関税の強化です。知的財産権、つまり発明やデザインといった「アイデアの所有権」を中国が侵害しているとして、米国は制裁の刃を振るいました。当初はロボットや半導体といった産業用製品が中心でしたが、2019年9月1日に発動された第4弾では、ついに私たちの生活に身近な家電製品までが対象となりました。これに対し中国も即座に報復し、まさに意地と意地がぶつかり合う泥沼の展開です。
ハイテクと通貨に広がる火種、ファーウェイを巡る攻防
12月15日に予定されていた追加関税こそ、直前の合意によって回避されましたが、これで平和が訪れたと考えるのは時期尚早かもしれません。米国は、急速に力をつける中国を「自国の地位を脅かすライバル」として強く警戒しています。その象徴が、通信機器大手ファーウェイへの禁輸措置や、中国を「為替操作国」と認定した動きです。為替操作国とは、輸出を有利にするために国が不当に通貨安へ誘導していると認定された国のことで、対立はもはや貿易の枠を超えています。
こうした巨人の争いは、周囲の国々にも大きな影響を及ぼしています。次世代の超高速通信「5G」の導入を急ぐ東南アジア諸国は、安価で高性能なファーウェイ製品を排除したい米国との間で難しい舵取りを迫られました。一方で、中国からの生産拠点移転を狙うベトナムやタイなどは、この混乱を好機と捉えて激しい誘致合戦を繰り広げています。どこかが傷つけばどこかが潤う、そんな皮肉な構図が世界各地で浮き彫りになったのが2019年でした。
揺らぐ同盟の絆、NATOを襲った「脳死」の衝撃
混乱は中東や欧州でも連鎖しています。NATO(北大西洋条約機構)の一員であるトルコが、あろうことかロシア製のミサイル防衛システム「S400」を2019年7月12日に導入し始めたことで、米欧との亀裂は決定的なものとなりました。NATOは本来、加盟国が共同で守り合う組織ですが、敵対視するロシアの兵器を取り入れる行為は、まさにタブー破りです。これに激怒した米国は、最新鋭ステルス戦闘機F35のプロジェクトからトルコを即座に追放しました。
さらに追い打ちをかけたのが、2019年10月のシリア情勢です。トランプ大統領が駐留米軍の撤退を突如決めたことで、トルコによるクルド人勢力への越境攻撃を許す形となり、フランスのマクロン大統領は「狂気の沙汰だ」と猛批判を展開しました。マクロン氏が放った「NATOは脳死状態にある」という刺激的な言葉は、SNSでも「同盟の終焉か」と大きな衝撃を与えています。対話の努力は見られるものの、本質的な不信感という病根は未だに取り除かれていません。
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