長らく減少傾向が続いていた企業の倒産件数が、ついに増加へと転じる兆しを見せています。リーマン・ショックが起きた2008年をピークに落ち着きを保っていましたが、2019年は1月から11月までで約8000件に達しました。このままでは2018年の実績である8235件を上回るのが確実な情勢であり、2020年もこの深刻な傾向は継続する見通しです。かつてのバブル崩壊後のように不動産バブルが弾けた大企業の連鎖倒産とは異なり、現代は足元の「構造問題」が静かに日本経済を蝕んでいます。
ネット上でもこのニュースに対して「身近なお店が急に閉まってショック」「黒字なのに人手が足りなくて廃業なんて悲しすぎる」といった、危機感を募らせるSNSの声が相次いで寄せられました。東京の主要駅近くで90年以上の歴史を誇った老舗の靴店が、前社長の引退に伴い閉店した事例はその象徴と言えます。現在のビジネス界において最も警戒すべきなのが、人手不足を起因とする企業のギブアップなのです。データが示すその実態は、私たちの想像以上に深刻化しています。
過去最多を記録した「人手不足倒産」の正体
東京商工リサーチの調査によると、2019年1月から11月までの人手不足を原因とした倒産は374件と前年同期比で3%増加しました。2019年通年では426件にのぼり、調査を開始した2013年以降で過去最多を記録したのです。ここで言う人手不足倒産とは、従業員が集まらないことで操業を続けられなくなったり、人件費の高騰に耐え切れなくなったりして経営破綻することを指します。そして、その背景にある最大の要因が経営者の「後継者難」であり、全体の6割以上を占めています。
例えば、京都府の老舗呉服メーカーである谷口絹織が2019年8月に破産手続きを開始したケースでは、着物離れという需要減に加えてトップの逝去による後継者不在が決定打となりました。このように、技術や伝統があっても次世代へバトンを渡せずに潰れていく中小企業が後を絶ちません。有効求人倍率が高止まりする中で、資金力に劣る中小企業は求人難と人件費上昇のダブルパンチに苦しんでおり、大企業との格差は広がる一方です。
地方銀行への波及と世界経済の暗雲
この問題は企業の現場に留まらず、地域の金融を支える地方銀行にも影を落とし始めています。上場する地銀グループの2019年4月から9月期の決算では、将来の貸し倒れに備えるための不良債権処理費用が前年同期の2倍以上に膨らみました。長期にわたる金融緩和によって「融資先が倒産するはずがない」という現場の緊張感が薄れていたことも露呈しています。現在は1兆円を超えるような超大型倒産こそ少ないものの、中小企業の小規模な破綻がドミノ倒しのように積み重なっている状態です。
さらに、世界銀行が2020年の世界経済成長率の予測を2.5%へ下方修正したことも不安を煽ります。米中対立や中東情勢の緊迫化など、外的なリスクが日本経済の回復に冷や水を浴びせかねません。2020年夏の東京五輪によるインバウンド効果で非製造業は一時的に潤うかもしれませんが、製造業の落ち込みをカバーしきれるかは不透明です。日本の産業の裾野を支える中小企業の衰退は、国力そのものの衰退に直結するという強い危機感を持つべきでしょう。
編集部の一言:今こそ「事業承継」への大改革が必要
今回のデータを見て痛感するのは、人手不足や後継者不足は一企業の怠慢ではなく、日本の人口減少が生んだ社会の構造病であるということです。2025年までに70歳を超える経営者の約半数が後継者未定という試算は、日本経済の背骨が折れかねない大問題です。単なる延命措置の融資ではなく、国や地域が一体となったM&A(企業の合併・買収)の支援や、若い世代が中小企業の経営を引き継ぎたくなるような抜本的な税制改革が急務ではないでしょうか。宝のような技術や歴史をここで途絶えさせてはなりません。
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