2020年の静岡県は、東京五輪の自転車競技会場に選ばれるなど、世界中から熱い視線を集める特別な1年を迎えています。この記念すべき年の幕開けにあたり、静岡経済の未来を牽引する川勝平太知事に、今後の産業振興や災害への備え、そして全国的な注目を集めるリニア中央新幹線を巡る問題についてお話を伺いました。
インターネット上では「リニア着工の行方がどうなるのか、知事の本音が知りたい」「お茶だけではない静岡の魅力をもっと発信してほしい」といった、県の動向を注視する声が数多く寄せられています。
環境の世紀に輝く「食材の王国」と第1次産業の復興
川勝知事が2020年に最も期待を寄せるのは、地球環境と調和するビジネスです。知事は、20世紀が戦争の時代であったのに対し、21世紀は地球を守る「環境の世紀」になると予見されています。そこで鍵を握るのが、農業や水産業といった第1次産業の存在です。
2009年7月5日の知事就任当時、県庁内では地元の農産物品目数すら把握されていなかったそうですが、調査の結果、静岡は日本一の品目数を誇る「食材の王国」であることが判明しました。これからは最新技術を駆使し、価格競争とは無縁の「農業芸術品」と呼べる高付加価値な作物を生み出していく方針です。
さらに、豊かな海洋資源を抱える駿河湾の存在も見逃せません。海底から真水が湧き出る特殊な環境が生み出す豊富なプランクトンを活かし、最先端の海洋科学技術を融合させる「マリンオープンイノベーション」を推進していく構えです。これらを通じて、静岡から第1次産業の文芸復興、すなわちルネサンスを巻き起こすという力強い決意が伝わってきます。
単に作物を育てるだけでなく、先端科学と融合させてブランド化を狙う姿勢には、地方創生の新しいヒントが隠されていると感じます。
次世代モビリティが変える静岡の観光ビジョン
県が力を注ぐ自動運転の走行実験も、実は環境先進県を目指す取り組みの一環です。自動車産業の変革によって環境が改善されれば、美しい景観が守られ、結果として観光業の活性化に繋がると知事は分析します。
目指すのは、静岡県全体を江戸時代の大名庭園のような、歩いて回れる「回遊式庭園」に見立てる壮大な構想です。車や自転車で心地よく巡れる空間づくりが期待されています。
2020年の夏に開催される東京五輪の自転車競技への期待も高まるばかりです。二酸化炭素を排出しないエコな乗り物である自転車を通じて、2019年のラグビーワールドカップで日本代表が強豪アイルランドを破ったあの「静岡ショック」のような感動を、再び世界に届けたいと熱弁されています。
過去の教訓を活かした独自の防災ネットワーク構築
自然災害への備えについても、独自の危機管理意識が示されました。2009年の知事就任直後に駿河湾沖地震を経験して以来、知事は議会での説明を必ず防災の話題から始める徹底ぶりを貫いています。
この10年間で数千億円もの予算を防災対策に投入し、防潮堤の整備などを進めてきました。2019年の台風19号では、大型河川の決壊こそ免れたものの、支流の流域で床上浸水が発生したため、今後は細かな支流も含めた全ての浸水エリアを精査する方針です。
また、2016年4月14日に発生した熊本地震など、他県での震災支援で得た避難所運営のノウハウを地域の防災力向上に還元していくと言います。住民同士が話し合い、地域の実情に寄り添った避難体制を築く姿勢は、ハード面だけでなくソフト面の強化としても非常に重要でしょう。
リニア中央新幹線問題への着地点と決断の環境づくり
膠着状態が続くリニア中央新幹線の県内工区を巡る問題について、知事は意外な胸の内を明かされました。自身が長年にわたり国の国土審議会委員を務めてきた経緯から、実は「リニア推進派」であり、反対のための反対をしているわけではないと明言されています。
SNS上では「大井川の水資源を守ってほしい」という切実な声が上がる一方で、「国家プロジェクトを停滞させないでほしい」という意見もあり、議論は複雑に絡み合っています。
知事自身はすでに具体的な着地点を頭の中に描いているものの、決定権を持たない立場として明言は避けています。しかし、リニアか水かという二者択一の対立構造が深まれば、世論がリニア不要論に傾きかねないと危惧されています。この危機を回避するためにも、国やJR東海という意思決定者が最適な判断を下せるよう、周囲が協力して環境を整えることが最善の道であると結ばれました。
対立を煽るのではなく、双方が納得できる着地点を冷静に模索しようとする姿勢に、今後の議論の進展を期待せずにはいられません。
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