【2020年展望】百貨店業界の生き残る道とは?日本百貨店協会・赤松憲会長が語る「五輪消費の真実」と「子の繁栄」への戦略

2020年1月1日、輝かしい令和初の元旦を迎えました。今年の干支は「庚子(かのえね)」であり、相場格言では「子は繁栄」と言い伝えられています。東京オリンピック・パラリンピックという歴史的な祭典を控え、日本中が熱狂に包まれることが予想されますが、流通業界の最前線に立つ人々は、この状況をどのように捉えているのでしょうか。日本百貨店協会の赤松憲会長に、2020年の消費動向と業界が直面する課題について、その本音を伺いました。

振り返れば、2019年は百貨店にとって試練の連続でした。年明けから都市部のインバウンド需要に陰りが見え始め、追い打ちをかけるように10月の消費増税が重くのしかかったのです。赤松会長は、改元に伴う祝賀ムードや増税前の駆け込み需要といった明るい兆しはあったものの、既存店売上高は前年比で約1%の減少になったと指摘します。ネット上でも「百貨店の閉店ニュースが増えて寂しい」といった声が散見され、時代の転換点を予感させる1年となりました。

特に地方百貨店の苦境は深刻な状況にあります。赤松会長は、人口減少という構造的な問題に加え、強力な集客力を持つショッピングセンターや、24時間どこでも買い物ができるインターネット通販(EC)への顧客流出が止まらない現状を危惧されています。これまで都市部で成功を収めてきた「高級感」や「対面販売」というビジネスモデルが、地方の生活実態やニーズと乖離し始めているという認識は、業界全体に共通する危機感と言えるでしょう。

しかし、百貨店側もただ手をこまねいているわけではありません。地下の食品売り場、いわゆる「デパ地下」をあえて別の階に配置したり、家電量販店をテナントとして誘致したりするなど、常識を打ち破る「大胆な自己改革」が始まっています。SNSでも「デパートに家電量販店が入って便利になった」と利便性を評価する投稿が見られ、従来の枠組みにとらわれないMD(マーチャンダイジング:商品の企画や品揃えを管理する活動)への転換が急がれています。

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五輪景気は幻想か?インバウンド消費の新たな形

2020年の目玉である東京五輪について、赤松会長の見解は非常に冷静です。「五輪があるから売れる」という楽観論に対し、慎重な姿勢を崩しません。開催期間中は都内の混雑や物流の停滞が予想され、混雑を嫌う日本人消費者が外出を控える「買い控え」のリスクがあるからです。また、純粋にショッピングを楽しみたい訪日外国人客も、あえて大混雑する五輪期間を避ける可能性が高く、過度な期待は禁物であると警鐘を鳴らしています。

実際に過去のロンドン五輪でも、現地の老舗百貨店は集客に苦戦したという前例があります。赤松会長は「売上を爆発的に伸ばすことよりも、いかにマイナス要素を最小限に抑えるか」という守りの戦略も重要だと語ります。一方で、訪日客の質は確実に変化しています。かつての「爆買い」のような一過性のブームは去り、SNSでの口コミを参考に、自分のために本当に良いものを選ぶ「リピーター」が中国を中心に増加しているのは明るい材料です。

インバウンド戦略は今、より精緻なものへと進化しています。2020年1月下旬からは、中国の旧正月(春節)に合わせた第2弾のセールを戦略的に展開する予定です。現地インフルエンサーを活用したプロモーションや、百貨店巡りを組み込んだ専用ツアーの企画など、ターゲットを絞ったデジタルマーケティングが主流となっています。もはや訪日客は単なる「通りすがりのお客様」ではなく、共にブランドを育てるパートナーと言えるでしょう。

消費増税の傷跡についても、赤松会長は鋭い分析を示しています。売上数字としての落ち込みは3ヶ月ほどで沈静化する見込みですが、消費者の心理的負担は半年ほど続くという予測です。税率が「2桁」になったショックは想像以上に大きく、人々の生活防衛意識は依然として高いままです。百貨店という華やかな場所が、日常の節約志向の中でいかに「自分へのご褒美」としての価値を提供し続けられるか、その真価が問われる2020年となりそうです。

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