モスクワからの最新情報によりますと、ロシアのプーチン大統領は2020年1月21日、15日に起きたメドベージェフ内閣の総辞職を受け、待望の新閣僚を任命しました。すでに決定していたミシュスチン首相に続き、第1副首相には自身の側近であるベロウソフ大統領補佐官を抜擢したのです。自ら政府のコントロールを一段と強める姿勢が、今回の人事から非常に鮮明に伝わってきます。
この劇的な政権刷新に対し、日本のSNSでも「プーチン氏の権力への執念がすごい」「実務型にシフトして本気で経済を立て直すつもりか」といった驚きの声が相次いでいます。2024年の大統領退任後も実質的なトップとして権力を握り続ける、いわゆる「院政」を見据えた動きであることは間違いありません。政権の安定的な移行のために、まずは国民生活の改善を最優先する実務型の布陣を敷いてきました。
2020年1月21日にモスクワで開かれた新閣僚との初会合において、プーチン氏は「最も重要なのは国民の福祉向上とロシアの国際的地位の強化だ」と力強く語っています。また、ミシュスチン新首相も経済成長の促進とビジネス環境の改善を最重要課題として掲げました。前職の連邦税務局長官時代に税収を大幅に増やした実績が評価されたミシュスチン氏ですが、経済全体の舵取りとしては未知数な面も否めません。
そこで、彼の弱点を補うためにプーチン氏が送り込んだのが、今回の目玉人事であるベロウソフ第1副首相です。9人いる副首相の中で唯一「第1」の肩書を持つ彼は、過去に経済発展相も務めたプーチン氏の熱い信頼を受ける懐刀として知られています。首相に実務や歳出の効率化を任せつつ、このベロウソフ氏を介してプーチン氏が裏から経済政策のタクトを振るう可能性が極めて高いと私は見ています。
その一方で、ラブロフ外相とショイグ国防相という外交・安全保障のツートップはしっかりと留任されました。ロシアでは経済を首相が、外交・安保は大統領が直接管轄する仕組みになっています。ここが変わらないということは、中国との連携強化やアメリカへの強硬姿勢といった、これまでの基本路線をそのまま継続するという明確なメッセージです。巧みな安定感の演出は、さすがプーチン氏といったところでしょう。
これほど大胆に経済閣僚を入れ替えた背景には、メドベージェフ前内閣で深刻化した経済低迷に対するプーチン氏の強い危機感があります。実質成長率が1%台にまで落ち込み、貧困が広がる中で、与党の支持率は30%台にまで急落していました。まさに政権基盤を揺るがす大ピンチを迎えていたわけです。1999年の大統領代行就任から20年以上も権力を維持してきた絶対的リーダーにも、焦りが見え隠れします。
彼が目指す「院政」の成功には、何よりも国内経済の安定が不可欠です。2020年1月15日の年次教書演説でも、最低所得の保証や巨額の国家事業をぶち上げ、国民の不満をそらそうと必死な様子が窺えました。しかし、私はこの経済改革が茨の道になると考えています。なぜなら、ロシア経済の本質的な病巣は、政府の介入が大きすぎる「国家資本主義」そのものにあるからです。
国家資本主義とは、国が民間企業のように経済活動をコントロールする仕組みを指します。2019年5月の報告では、ロシアのGDP(国内総生産)に占める国家部門の割合が最大7割に達した可能性が指摘されました。国営企業やプーチン氏に近い利権構造が経済を独占している限り、真の経済成長は望めないでしょう。それでも構造を変えないのは、自らの利権を守るためという指摘もあり、新内閣の前途は多難です。
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