地方銀行を取り巻く経営環境が厳しさを増すなか、北国銀行が大胆な戦略を発表しました。同行は2019年6月5日に東京都内で機関投資家向けの決算説明会を開催し、安宅建樹頭取は、収益源の多様化と業務効率化に向けた具体的な取り組みを説明されました。その中で、注目すべきは店舗体制の見直しです。現在、石川県を中心に100拠点で展開されている店舗網について、「この1~2年で10店舗以上減らしていきたい」という考えを示されました。これは全体の約1割に相当する規模の削減となり、地域金融機関のビジネスモデル変革を象徴する動きと言えるでしょう。
この店舗削減の背景には、インターネットバンキングの普及があります。来店せずに各種取引を済ませる顧客が増えたため、都市部の小規模支店の集約を進めることで、経費の抑制を図ることが狙いです。特に、北国銀行はデジタルシフトを加速させており、2019年8月からはクラウドシステムを用いた新たな個人向けインターネットバンキングの運用を開始する計画です。クラウドシステムとは、インターネット経由で必要なサービスを利用できる仕組みであり、これにより、スマートフォンを使った取引環境を充実させ、顧客の利便性を飛躍的に向上させる見込みです。このデジタル対応強化は、店舗に来なくても質の高い金融サービスを提供するための重要な一手となります。
一方、店舗網の戦略的な強化も同時に進められています。特に富山県と福井県においては、積極的な営業戦略が功を奏し、貸出金残高が2桁ペースで伸長している状況です。同行が得意とするコンサルティングビジネスと融資を両輪とすることで、これら両県での顧客基盤を広げ、引き続き融資シェアを拡大していく姿勢が示されました。コンサルティングビジネスとは、企業の経営課題解決や成長戦略の支援など、金融商品の提供に留まらない専門的な助言を行う事業であり、地方銀行が本業の収益を確保するための重要な柱となっています。
こうした地方銀行の収益環境の悪化について、安宅頭取は強い認識を示されました。頭取は、収益低迷の主因は「地域経済が疲弊しているからではなく、日本銀行によるマイナス金利政策が原因」であると強調されました。マイナス金利政策とは、日本銀行が金融機関から預かるお金の一部にマイナスの金利を適用することで、市場への資金供給を促す金融政策です。頭取は、地域の課題に地銀経営者が十分に対応せず、ビジネスモデルの変革に取り組んでいないとする日本銀行側の一部指摘に対し、真っ向から反論を展開されました。
この北国銀行の発表は、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。「ついに地方も本格的に店舗削減に動くのか」「ネットバンキング強化はありがたい」といった、デジタル化を歓迎する声がある一方で、「お年寄りなど、ネットに不慣れな層への配慮が重要だ」「地方では店舗での対面サービスが不可欠なのに」といった、今後のサービス維持を心配する声も見受けられます。私の考えでは、超低金利という厳しい環境下で収益力を維持するため、業務効率化は避けて通れない道です。北国銀行の打ち出した、デジタル化による利便性向上と、成長市場でのコンサルティングビジネス強化という両面作戦は、地方銀行が生き残りをかける上で、模範的なモデルケースとなり得るでしょう。
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