微笑みの国・タイにおいて、政治の大きな転換点がいよいよ訪れようとしています。2014年のクーデター以来、軍事政権を率いてきたプラユット氏が、新たな首相として選出され、2019年7月中旬にも新内閣が産声を上げる見通しとなりました。約5年という長い年月を経て、ようやく形の上では民生へと復帰することになりますが、その船出は決して穏やかなものとは言えないようです。
かつてのタクシン元首相派と反タクシン派による激しい対立の末、社会の秩序を回復するという名目でプラユット氏が権力を握ったのは2014年5月22日のことでした。当初は速やかな民政復帰を公約に掲げていたものの、実際に総選挙が実施されるまでには5年もの月日が必要だったのです。この長すぎる空白期間を経て、ついに国民の審判を受ける形となったわけですが、今回の首相選出には軍事政権時代に整えられた制度が大きな役割を果たしました。
薄氷の過半数維持!19党連立という「ガラス細工」の危うさ
SNS上では、ようやく民主的な手続きが進んだことを歓迎する声がある一方で、軍政が有利になるよう改変された選挙制度に対して「出来レースではないか」と疑問を呈する厳しい投稿も目立ちます。特に注目を集めているのは、下院における支持勢力の脆弱さでしょう。連立に参加する政党数はなんと19にものぼり、その足並みを揃えるのは至難の業です。下院での議席数は過半数をわずかに上回る程度であり、少しの離反で政権が揺らぎかねません。
ここで言う「クーデター」とは、軍隊などが武力を用いて非合法的に政権を奪取することを指します。プラユット氏はまさにこの手法でトップに立ちましたが、今後は議会という民主的な土俵で戦わなければなりません。また「連立政権」とは、複数の政党が協力して一つの政府を形成することですが、19もの組織が利害関係を調整しながら政策を進めるのは、まさに「ガラス細工」のような繊細さと脆さを孕んでいると言えるでしょう。
筆者の個人的な見解としては、この多党連立がタイの政治に真の安定をもたらすのか、非常に懐疑的にならざるを得ません。軍政下で叫ばれてきた「安定」が、民主的な議論の場において足枷になる可能性は否定できないからです。多様な意見を吸い上げる民主主義の利点が、単なる政治的な停滞を招いてしまえば、国民の期待を裏切ることになりかねません。2019年7月13日現在、新政権がどのような優先順位で国を導くのか、世界中がその動向を注視しています。
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