旭山動物園・坂東元園長が挑む「命の恩返し」とは?ボルネオの絶滅危機と私たちの暮らしを結ぶパーム油の真実

北海道旭川市に位置する旭山動物園は、動物が本来持っている能力や行動を引き出す「行動展示」という画期的な手法で、全国的な人気を博しています。かつては廃園の危機に追い込まれていたこの場所を、日本を代表する人気スポットへと復活させた立役者が、園長の坂東元さんです。2019年7月17日現在、58歳を迎えた坂東園長は、動物園内での成功に満足することなく、遠く離れたマレーシアの地で、野生動物の命を守るための新たな戦いに挑んでいます。

「行動展示」とは、単に動物の姿を見せるだけでなく、泳いだり飛び跳ねたりする野生本来のダイナミックな動きを間近で観察できる仕組みを指します。この手法で多くの観客を魅了してきた坂東園長ですが、現在はボルネオ島の絶滅危惧種を守る活動に力を注いでいるのです。華やかな成功の裏側で、彼は「動物園の真の役割とは何か」という問いに、真摯に向き合い続けています。野生の命が失われゆく現状を前に、動物園ができる恩返しについてお話を伺いました。

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ボルネオの熱帯雨林が悲鳴を上げる!パーム油の生産に隠された野生動物の苦悩

マレーシアのサバ州を拠点とする「ボルネオへの恩返しプロジェクト」は、開始から10年という節目を迎えました。活動の主眼は、絶滅の淵に立たされているボルネオゾウを保護することにあります。かつて豊かな生物多様性を誇ったボルネオの熱帯雨林は、近年その面積を急激に減らしています。その背景にあるのは、世界中で需要が高まっている「パーム油」を採取するための大規模な農園、通称「プランテーション」の開発なのです。

ここで解説が必要なのは、パーム油が私たちの生活に欠かせない存在であるという点でしょう。この油はアブラヤシから採れ、冷凍食品やチョコレート、粉ミルク、石鹸、さらにはスナック菓子の揚げ油など、驚くほど多くの製品に使われています。私たちが便利な生活を享受する一方で、森を追われたゾウたちは食べ物を求めて農園を荒らすようになり、人間から「害獣」として命を奪われるという悲劇が繰り返されているのが現状です。

坂東園長は、この過酷な状況を打開するために、ゾウをジャングルへ安全に戻すための輸送檻を寄贈しました。さらに、最近では負傷したり孤立したりした個体を一時的に保護するレスキューセンターの建設も実現させています。旭山動物園にはボルネオゾウはいませんが、同じ森で暮らすボルネオオランウータンが飼育されています。園長は、彼らの「ふるさと」が消えていくことを、決して人ごとではないと強い危機感を募らせているのです。

「動物園は金儲けの場所か?」という問いかけが変えた坂東園長の視点

坂東園長がこの活動に身を投じるきっかけとなったのは、ある人物からの厳しい言葉でした。それは、野生動物と人間との共生を目指す「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」の代表、坪内俊憲さんから投げかけられた「動物園は動物を見せ物にして金を稼ぐ場所なのか?」という問いです。当時の旭山動物園は、年間来園者が300万人を超え、人気施設には長蛇の列ができるほどの絶好調を維持していた時期でありました。

あまりの混雑ぶりに、動物の輝きを見せるはずが、実際には前の人の背中しか見えないような状況に、園長自身も「これが本当に成功と言えるのか」と自問自答していたそうです。坪内さんの挑戦的な言葉に対し、坂東園長は「それならやってやろうじゃないか」と決意を固めました。動物たちの「命の輝き」を伝えてきた立場として、その命の源であるふるさとが破壊されるのを黙って見過ごすことは、自らの信念に反すると考えたのでしょう。

SNS上では、この活動に対して「動物園に行くだけでなく、自分たちが使う製品の影響を考えなければならない」といった驚きの声や、「坂東園長の行動力には頭が下がる」という応援のメッセージが数多く寄せられています。単なるレジャー施設としての枠を超え、環境問題の最前線に立つ動物園の姿勢に、多くの人々が共感を示しているのです。私たちの豊かな暮らしが、遠い国の動物たちの犠牲の上に成り立っているという事実は、現代社会に大きな一石を投じています。

編集部が考える、これからの動物園と私たちの「選択」

筆者の意見としては、坂東園長の取り組みこそが、21世紀における動物園の存在意義を定義するものだと確信しています。絶滅が危惧される動物を囲いの中で守るだけでなく、野生の生息地と私たちの消費生活を繋ぐ「架け橋」としての役割が今、強く求められているのではないでしょうか。私たちが買い物をする際に、環境に配慮された製品を選ぶという小さな選択が、ボルネオの森を救う第一歩になるという事実は非常に希望に満ちています。

野生動物として絶滅しても、動物園の中でだけ生き残っていればそれで良いのかという園長の問いは、非常に重い響きを持っています。動物たちの素晴らしい姿を見せてくれる動物園に感謝すると同時に、私たちはその背景にある環境問題から目を逸らしてはなりません。旭山動物園が発信する「命のメッセージ」を受け取り、明日からの生活の中で何ができるかを一人ひとりが考え、行動に移すことが、坂東園長の願う最高の「恩返し」になるはずです。

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