世界を揺るがしている米国による対中制裁関税の発動から、2019年07月で早くも1年が経過いたしました。この緊張状態の長期化を背景に、グローバル企業の間では生産拠点を中国国外へと移す「脱中国」の動きが、かつてないスピードで加速しています。特に世界的な注目を集めているのが、IT大手のアップルによる大胆な戦略転換です。同社は主要な取引先に対して、中国での生産能力のうち15%から30%程度を海外へ分散させるよう、異例の要請を行っていることが明らかになりました。
こうした流れを受け、アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods(エアーポッズ)」の生産を請け負う中国の電子機器大手、歌爾声学(ゴーテック)は、ベトナム北部での生産準備に着手しました。これまで中国国内のみで行われてきた同製品の製造が国外へ出るのは、今回が初めてのケースとなります。関係筋の情報によれば、2019年07月現在の数週間以内には最新モデルのテスト生産が開始される見込みで、順調に進めばそのまま本格的な量産体制へと移行する計画だといいます。
SNS上では、このニュースに対して「ついにAirPodsも『Made in Vietnam』になるのか」「中国依存のリスクが現実味を帯びてきた」といった驚きの声が広がっています。また、iPhoneの組み立てで知られる台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業も、インド南部で最新モデルの生産を開始する見通しであることが報じられました。企業にとって、単なるコスト削減を超えた「地政学的リスク」への対応が、いまや最優先課題となっている様子が伺えるでしょう。
50社を超える主要企業が動く!多業種に波及するサプライチェーン再編の苦悩
日本経済新聞の調査によれば、生産拠点の移管を表明、あるいは検討している世界の主要企業はすでに50社を超えました。ここで言う「サプライチェーン」とは、原材料の調達から製造、在庫管理、配送を経て消費者の元へ届くまでの「供給の連鎖」を指す専門用語です。この網の目を一から作り直す作業は、企業にとって莫大なコストと労力を強いる大きな負担となりますが、それでもなお、関税リスクを回避するためには避けられない選択となっているのが現状です。
移管の動きは電子機器の分野に留まりません。米HP(ヒューレット・パッカード)やデルといったPC大手も、ノートパソコン生産の最大3割を東南アジアなどへ移す検討を始めています。さらに、日本の建設機械メーカーであるコマツも、建機部品の一部を日本や米国へと戻す決断を下しました。このように、多岐にわたる業種において、製造の現場が世界規模で再編されるという、まさに歴史的な転換点を私たちは目の当たりにしているのです。
中国政府にとって、この「外資離れ」は深刻な懸念材料に他なりません。2017年の統計では、中国の輸出入額のうち約4割を外資企業が占めており、雇用面でも香港・台湾系を含めると約2600万人の職を支えているからです。中国当局は規制緩和などの優遇策を打ち出して引き止めに必死ですが、人件費の高騰という構造的な問題に米中対立が追い打ちをかけている以上、この大きな潮流を止めるのは容易ではないと私は考えます。
私自身の見解を述べさせていただくなら、今回の動きは一過性の騒動ではなく、世界経済のパワーバランスが根本から書き換わる前兆ではないでしょうか。企業が「効率性」よりも「安全性」を重視する時代への移行は、製品価格の上昇という形で私たちの生活にも影響を及ぼす可能性があります。それでも、特定の国に依存しすぎない強固な体制を構築することは、長期的な視点で見れば世界経済の安定に寄与するはずだと確信しています。

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