大阪府泉佐野市が、2019年6月からのふるさと納税新制度から除外されたことに強く反発し、国の第三者機関である国地方係争処理委員会(こくちほうけいそうしょりいいんかい)に審査を申し出る方針を2019年6月4日に明らかにされました。新制度の開始直前のこの動きは、ふるさと納税制度を巡る国と地方自治体の関係に一石を投じる重大な展開であるといえるでしょう。
総務省は2019年5月14日、泉佐野市を含む4つの自治体を新制度の対象から外すと発表しました。この除外措置に対し、泉佐野市の千代松大耕市長は「法治のルールを自ら破る総務省の対応は、ふるさと納税にとどまらず、大変危険だ」と強い危機感を表明されています。もし係争処理委員会の判断に納得できなかった場合、制度上は高等裁判所に訴訟を提起することが可能ですが、市長は「結果を見て検討する」と慎重な姿勢を示されています。
総務省が泉佐野市を新制度から外した具体的な理由として、2018年11月から2019年3月までの間に、地場産品(じばさんぴん:その土地で生産される産物や製品)以外の返礼品、特にアマゾンギフト券などを提供することで、約332億円という巨額の寄付を集めた点を2019年5月24日の回答書で挙げています。しかし、泉佐野市側は、新制度の基盤となる改正地方税法が施行された2019年6月1日以前の総務省の指導は、あくまで**「技術的助言」**に過ぎなかったと主張しています。
千代松市長は、地方自治法において「助言に従わなかったことを理由に、国が地方自治体に不利益な取り扱いをしてはならない」と明記されている点を指摘し、今回の除外措置がこの法律の精神に反すると訴えています。さらに、法施行前の取り組みを理由に自治体を制度から除外することは、「法の不遡及」(ほうのふそきゅう)の原則に違反するとして、総務省の対応を厳しく批判されているのです。
法の不遡及とは、新しく制定された法律や改正された法律は、その施行日(しこうび:法律や規定が効力を発し、実際に適用され始める日)から効力が生じ、それより前の行為に遡って適用されないという重要な原則です。特に個人の権利・自由に関わる刑法の分野では厳格に適用され、日本国憲法第39条でも、実行の時点で適法だった行為について刑事上の責任は問われないと明確に定められている、民主主義国家における法治主義(ほうちしゅぎ:国の政治は、権力者や個人の意思ではなく、法律に基づいて行われるべきであるとする考え方)の根幹をなすルールといえるでしょう。
この争いの舞台となる国地方係争処理委員会は、国と地方自治体の間で生じた紛争を、公平に解決するために総務省に設けられた第三者機関です。総務大臣が両議院の同意を得て、有識者5名を委員として任命します。過去の事例では、2018年11月に沖縄県が米軍普天間基地の移設問題を巡り、国土交通大臣の決定を不服として同委員会に審査を申し出ていますが、2019年2月に却下され、同県は2019年4月に再び審査を求めている状況です。
インターネット上では、泉佐野市の姿勢に対し、「法の不遡及を持ち出すのは筋が通っている」「泉佐野市の行動は法治国家としての原則を守るために重要だ」といった賛同の声がある一方で、「度を越した返礼品競争は制度の趣旨を歪めた」「ルール違反に近い行為を続けた結果だ」といった厳しい意見も見られ、SNS上でも大きな議論を呼んでいる模様です。私見ですが、この問題は、ふるさと納税のあり方だけでなく、国と地方の権限、そして法律の適用という、日本の行政の根幹に関わる重大なリーガルイシュー(法的な争点)であり、その審議の行方は全国の自治体にとって注目に値するでしょう。
泉佐野市が係争処理委員会に申し立てを行うという事態は、ふるさと納税を単なる税金や寄付金の問題としてではなく、地方自治と法治主義の観点から深く考えさせる機会を提供してくれるはずです。この争いが、今後のふるさと納税制度の健全な発展、そして国と地方の関係性にどのような影響を与えるのか、私たちは注意深く見守る必要があるのではないでしょうか。
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