2016年4月の電力全面自由化から3年あまりが経過した2019年6月現在、業界に衝撃が走っています。経済産業省の調査によると、東京電力ホールディングス傘下の新電力である「テプコカスタマーサービス(TCS)」が、2月の月間販売電力量でついに首位に立ったことが判明しました。これまでトップを争っていたNTT系列のエネットなどを抜き去り、前年同月比3割増という驚異的な伸びを見せています。
SNSなどではこのニュースに対し、「結局、最後は巨大資本が勝つのか」「安くなるなら東電系でも構わないが、自由化の意義とは?」といった複雑な反応も見受けられます。通信や航空業界で過去に見られたような「大手への集約」という歴史が、電力市場でも繰り返されようとしているのかもしれません。私たち消費者が期待した多様な選択肢は、このまま大手の波に飲み込まれてしまうのでしょうか。
「持てる者」と「持たざる者」の残酷な格差
なぜ、これほどまでに明暗が分かれたのでしょうか。最大の要因は「発電所の有無」です。TCSは東電の100%子会社であり、グループが持つ巨大な石炭やLNG(液化天然ガス)火力発電所というバックボーンを活用できます。これにより、安価に電力を調達し、大規模工場などの大口顧客に対して攻撃的な価格提示が可能になるのです。
一方で、自前の発電設備を持たない独立系の新電力会社は苦境に立たされています。彼らは電力卸取引所などから電気を仕入れなければならず、価格変動のリスクを直接受けます。実際、2018年には一時首位に立ったこともあるF-Power(エフパワー)が、卸価格の上昇などが響き、同年6月期に120億円もの最終赤字に転落しました。この事例は、発電設備を持たない「一本足打法」の限界を冷酷に示しています。
自由化は有名無実化してしまうのか
ここで改めて「新電力」という言葉を整理しておきましょう。これは大手電力会社(旧一般電気事業者)以外の小売事業者を指しますが、今回のTCSのように、大手の子会社であっても管轄エリア外などで販売する場合は新電力として扱われます。つまり、統計上は新電力のシェアが伸びているように見えても、その実態は「旧来の巨人が形を変えて支配力を強めている」という構図なのです。
私自身、この状況には強い危機感を抱いています。欧州のように卸売市場が成熟し、地域のエネルギー公社が健全に育つ環境とは程遠いのが日本の現状です。専門家からも「東電グループなどの大手は赤字覚悟でシェアを取りに来ており、資金力のない新電力が対等に戦うのは不可能」との指摘が出ています。600社以上に倍増した参入プレイヤーたちの創意工夫が、資本の論理だけで潰されて良いはずがありません。
寡占が進めば、最終的には価格決定権が再び大手に握られ、競争原理が働かなくなる恐れがあります。2019年6月6日現在、私たちは電力自由化の真価が問われる重要な局面にいます。単なる安売り競争ではなく、公正な競争環境をいかに整備するか。これからの制度設計が、私たちのエネルギーの未来を左右することになるでしょう。
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