食卓の定番として親しまれてきた大手ブランドが、今まさに大きな時代の分岐点に立っています。味の素の西井孝明社長は、2019年07月31日に開催された会合の中で、デジタル化の波によって小売業界の構造が劇的に変化している現状に言及しました。これまでは、テレビCMなどで大量に広告を打ち、誰もが知る商品を大量に売る「マスマーケティング」が王道でしたが、その手法が通用しにくくなっているのです。
インターネットやSNSの普及により、消費者の好みは驚くほど細分化されました。西井社長は、これからの市場で勝ち残るのは、特定の層のこだわりに応える「スモールマス」な製品だけであるという鋭い分析を提示しています。スモールマスとは、文字通り「小さな塊」を指す造語です。万人受けを狙うのではなく、特定のライフスタイルや嗜好を持つグループをターゲットにし、そのニーズを確実に捉える戦略を意味しています。
こうした経営方針の転換に対し、SNS上では「自分の好みに合う商品が増えるのは嬉しい」といった期待の声が上がる一方で、「お馴染みの味が消えてしまわないか不安だ」という戸惑いも見られました。しかし、西井社長の視線はすでにその先を捉えており、多品種少量生産の体制構築や、EC(電子商取引)への対応を急ピッチで進める姿勢を鮮明に打ち出しています。ネット通販の拡大が、従来の店舗販売のあり方を変えつつあるのでしょう。
私個人の見解としては、この「スモールマス」へのシフトは、現代社会における多様性の尊重ともリンクしていると感じます。単一の価値観で食卓を彩る時代は終わり、一人ひとりが自分にとっての「最高の一皿」を求める豊かさが加速していくはずです。デジタル技術を駆使して消費者の声を細かく拾い上げる味の素の試みは、今後の食品業界における新しいスタンダードになるに違いありません。
コメント