欧州市場で医療機器を販売する企業にとって、避けては通れない大きな転換期が訪れています。KPMGコンサルティングは、2019年08月01日に、新たな欧州規制である「欧州医療機器規則(MDR)」への対応を全面的にサポートするコンサルティングサービスを開始しました。この動きは、複雑な手続きに頭を悩ませる国内の中小メーカーにとって、救いの手となるに違いありません。欧州進出の鍵を握る「CEマーク」取得のハードルが上がる中、プロの知見が求められています。
そもそも「CEマーク」とは、欧州連合(EU)の基準を満たしていることを証明する重要な認証です。これまでは「医療機器指令(MDD)」というルールが運用されてきましたが、2017年05月に新規則である「MDR」が発効されました。3年間の移行期間を経て、2020年05月26日から本格的に適用が開始される予定です。SNS上では「対応コストが想像以上で死活問題だ」「臨床データの要求が厳しすぎる」といった、現場の悲鳴に近い声が数多く見受けられます。
厳格化される監視体制と膨大なチェック項目への対応
今回の新規則MDRが、これまでのMDDと決定的に異なる点は、市販後の調査や流通管理が極めて厳格化されることです。具体的には、製品ごとに個別の識別子(UDI)を割り当てるシステムが導入され、専用のデータベース「EUDAMED(ユーダメッド)」への登録が義務化されます。これにより、製品に不具合が生じた際の追跡調査がより迅速に行えるようになりますが、企業側には膨大な管理コストが発生します。安全性への配慮は理解できますが、メーカーの負担増は否めないでしょう。
KPMGコンサルティングの西山真以マネジャーによれば、透析関連などの汎用的な機器であっても、現状と新規則とのギャップを埋めるためには1万項目以上の分析が必要になるそうです。同社は、製品ごとの影響分析から具体的な行程表の策定、そして最終的な認証取得までを伴走型で支援します。約3年という長期にわたるサポートを想定しており、これは単なるアドバイスの域を超えた、企業の存続を左右する重要なプロジェクトのパートナーと言えるのではないでしょうか。
規制の網はさらに広がり、これまでは対象外だったコンタクトレンズなども新たにMDRの管理下に置かれます。事業規模によっては対応費用が数億円から数十億円に達する見込みであり、経営資源が限られた中小企業にとっては、まさに正念場です。しかし、これを「障壁」と捉えるか、あるいは「品質を証明するチャンス」と捉えるかで、将来の市場シェアは大きく変わるはずです。私は、この厳しいハードルこそが、日本企業の技術力を再定義する機会になると信じています。
情報不足を解消し2024年の完全移行へ向けた備えを
驚くべきことに、KPMGグループが世界200社以上のメーカーを対象に行った調査では、約8割の企業がMDRの内容を十分に理解していないと回答しています。適用の開始が迫る2020年05月を目前に控え、この数字は世界的な混乱を予感させます。なお、現在保持しているMDD認証の期限が残っている場合は、2024年05月まで販売を継続できる猶予期間も設けられています。とはいえ、準備には膨大な時間を要するため、一刻も早い着手が必要不可欠でしょう。
また、血液検査などに用いられる体外診断用医薬品については「IVDR」という別の規則が適用されます。こちらは2022年05月からの運用開始となりますが、最終的な完全移行のデッドラインはMDRと同じ2024年に設定されています。KPMGはこうした複雑なスケジュール管理を含め、他社よりも手厚いサービスで差別化を図る狙いです。規制対応を「コスト」として切り捨てるのではなく、欧州市場という巨大な舞台で戦い続けるための「投資」と捉える視点が、今こそ経営者に求められています。
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