待機児童問題の解決策として期待を集める「企業主導型保育所」制度を揺るがす、極めて深刻な事態が明らかになりました。2019年07月下旬、東京地検特捜部は福岡市のコンサルタント会社「WINカンパニー」の社長、川崎大資容疑者を詐欺容疑で逮捕したのです。同容疑者は、保育所の整備が進んでいるかのように装い、国からの助成金約2億700万円をだまし取った疑いが持たれています。
この衝撃的なニュースに対し、SNS上では「子供たちのための税金が食い物にされるなんて許せない」「審査がガバガバすぎるのではないか」といった怒りと不安の声が渦巻いています。実際に2019年07月上旬に福岡市内の設置予定地を訪れると、そこには完成からは程遠い、コンクリート剥き出しの寒々しい空間が広がっていました。開業予定から1年以上が経過しても、子供たちの笑い声が響く気配は一切ありません。
「企業主導型保育所」とは?手厚い助成制度を悪用した巧妙な手口
そもそも「企業主導型保育所」とは、企業が主導して設置する保育施設で、認可外でありながら認可保育所並みの手厚い助成が受けられる画期的な仕組みです。2016年度の開始以降、2019年03月末までに約3800施設が決定するなど急拡大を遂げました。しかし、この「整備費の4分の3を国が補助する」という破格の支援体制が、皮肉にも悪徳コンサルタントにとっての「打ち出の小槌」となってしまったのです。
川崎容疑者らは、助成の審査を担う「児童育成協会」に対し、架空の工事請負契約書や偽造された口座記録を提出していたとされています。つまり、実際には行われていない工事に対して代金を支払ったように見せかけ、審査機関の目を欺いたわけですね。専門用語で言えば「虚偽申告」にあたりますが、これは単なる書類の不備ではなく、制度の根幹を揺るがす極めて悪質な知能犯罪であると言えるでしょう。
なぜ不正を防げなかったのか?露呈した審査体制の脆弱さ
これほど巨額の不正がまかり通ってしまった背景には、審査機関側の深刻な人員不足と「数ありき」の姿勢があったことは否定できません。協会の担当職員は約50名に過ぎず、全国に急増する申請書類のチェックだけで手一杯なのが現状です。内閣府からの業務委託が単年度契約であるため、長期的な視点で人員を増強し、現地調査を徹底することが困難だったという組織的な構造問題も浮き彫りになりました。
会計検査院の調査によれば、助成を受けた施設の約4割で定員割れが起きており、計画自体がずさんなケースも散見されます。本来、子供たちの安全と健やかな成長を支えるべき保育事業が、利益至上主義の隠れ蓑になっていた事実は看過できません。私たちは「預け先が増えれば良い」という視点だけでなく、その運営母体が信頼に足るものかどうかを厳しく見極める眼養わなければならない時期に来ています。
制度の信頼回復へ!内閣府が打ち出す審査厳格化の処方箋
相次ぐ不正摘発を受け、政府もようやく重い腰を上げました。2019年度に入り、協会は不正が発覚した10カ所の助成決定を取り消す決断を下しています。さらに内閣府の有識者検討委員会は、今後の対策として「5年以上の保育運営実績」を条件に加えることや、書面審査のみならずヒアリング調査を導入することを提言しました。性善説に基づいた運営から、実効性のある厳しい監視体制への転換が急務です。
編集部としては、今回の事件を機に、助成金の「出し方」だけでなく「使い道」に対する透明性が確保されることを強く望みます。保育所は単なるハコモノではなく、次世代を担う命を育む場所だからです。2019年08月08日現在、内閣府は業務委託先の再公募を含めた抜本的な改善に乗り出していますが、これが一過性の対応に終わらず、真に子供たちのための制度として再建されることを注視していく必要があるでしょう。
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