就職活動に励む学生の皆さんの信頼を揺るがす、極めて深刻な事態が明らかになりました。リクルートキャリアが提供していた、学生の「内定辞退率」を予測するスコアデータ販売問題において、親会社であるリクルートホールディングス自らもその情報を活用していたことが2019年08月20日に公表されたのです。同社は自社の採用活動において、このデータを合否判定には一切使用していないと主張していますが、身内へのデータ提供は組織全体での認識の甘さを露呈した格好でしょう。
今回の騒動で注目されている「内定辞退率の予測」とは、学生のサイト閲覧履歴や行動ログをAI(人工知能)などで分析し、その人がどれくらいの確率で内定を断るかを数値化する仕組みを指します。いわゆる「スコアリング」と呼ばれる技術ですが、本来は本人の同意を得て、適切な範囲で利用されるべき極めてプライベートな情報と言えるでしょう。しかし、今回の一件では、就職活動を行う学生側が全く予期しない形で自身のデータが売買されており、その不透明さが大きな怒りを買っています。
SNS上では、「就活生を商品としてしか見ていない」「合否に関係ないと言われても、信用できるはずがない」といった、怒りと不信感に満ちた反応が相次いで投稿されています。多くの若者が将来を賭けて利用するプラットフォームだからこそ、情報の取り扱いには厳格な倫理観が求められるはずです。今回のリクルートHDによる利用判明は、まさに火に油を注ぐ形となり、企業のガバナンス(企業統治)の在り方が厳しく問われているのは間違いありません。
さらに、データの購入先として新たにメイテックや三菱電機、京セラといった名だたる大手企業の名前も浮上してきました。こうした日本を代表する企業群が、なぜ学生の心情を逆なでするようなデータに頼る必要があったのか、疑問を禁じ得ません。企業側が効率的な採用を求める姿勢も理解はできますが、志望者との信頼関係を第一に考えるべき採用の現場において、このような数値による「選別」に近い行為が行われていた事実は非常に残念に感じます。
私自身の見解を述べさせていただくなら、今回の問題は単なる規約違反の有無を超えた、デジタル時代の倫理欠如が生んだ悲劇だと考えます。AIによる予測は便利ですが、それはあくまで人の熱意や個性を補完するものであるべきでしょう。人の一生を左右する就職という重要な場面で、本人の知らない間に数値化されたデータが一人歩きするような社会は、決して健全とは言えません。リクルートを含む各社は、まずは真摯に学生と向き合い、失われた信頼をどう回復すべきか熟考すべきでしょう。
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