テニスの世界四大大会において、一年の締めくくりを飾る「全米オープン」がいよいよ2019年08月26日から幕を開けます。ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターを舞台に、今年も熱い戦いが繰り広げられることでしょう。特に今大会は、ハードコート(セメントやアスファルトを基礎とした硬い素材のコート)を得意とする日本勢にとって、非常に相性の良い大会として大きな期待が寄せられています。
注目は何と言っても、前年度の覇者として連覇に挑む大坂なおみ選手です。彼女は2019年07月中旬から始まった北米ハードコートシーズンに参戦する直前、自身のSNSを通じて現在の心境を率直に明かしました。「ここ数カ月、人生で最悪の時を過ごした」という衝撃的な告白は、ネット上でも大きな反響を呼びました。ファンからは「正直な気持ちを伝えてくれてありがとう」「ずっと応援している」といった温かい励ましの声が殺到しています。
大坂選手は、勝たなければならないという重圧から結果にこだわりすぎ、一時はテニスを楽しむ心を失いかけていたようです。2019年01月の全豪オープン制覇直後にコーチを解任し、2019年03月からジャーメーン・ジェンキンス氏を新たなコーチに迎えましたが、新しい環境に適応するには相応の時間を要しました。世界ランク1位を守りたいという心理が、彼女の持ち味である攻撃性を削ぎ、守りに入ってしまう一因となったのかもしれません。
どん底から見えた光と、大坂なおみが挑む「究極の進化」
2019年04月から2019年07月にかけて、慣れないクレー(土)や芝のコートでの敗戦が続き、精神的な不安定さを露呈する場面も見受けられました。しかし、今夏のハードコート初戦となった大会ではベスト8に進出するなど、ようやく本来のリズムを取り戻しつつあります。敗北を糧に成長してきた彼女が、自分自身を深く見つめ直したことで、再び未来にワクワクしていると語る姿には、トップアスリートとしての強靭な魂を感じざるを得ません。
特筆すべきは、苦しい時期にも着実に磨き続けていた技術面での変化です。これまでの強打と鋭いサーブに加え、彼女は現在、ショットに変化をつける「スライス」や、ネット際にボールをポトリと落とす「ドロップショット」の習得に励んでいます。スライスとはボールに逆回転をかける技術で、相手の打点を低くし、リズムを崩す効果があります。一方のドロップショットは、意表を突いて相手を前方へ走らせる、非常に高度な戦術的ショットです。
2019年08月に開催されたロジャーズ・カップの準々決勝では、憧れのセリーナ・ウィリアムズ選手に敗れたものの、大坂選手の表情は非常に晴れやかでした。試合の中で何度もドロップショットに挑戦し、手応えを感じていたからです。負けてなお「夢がかなった」と言い切る彼女のピュアな感性は、私たちにスポーツの素晴らしさを思い出させてくれます。単なるパワープレーヤーを超え、多彩な技を操る万能型へと進化しようとしています。
現在の懸念は、2019年08月に行われたシンシナティの大会で痛めた左膝の状態です。準々決勝で途中棄権を余儀なくされましたが、これは本番を見据えた賢明な判断とも言えるでしょう。私は、彼女が抱えるこうした「人間らしさ」こそが、世界中のファンを惹きつける最大の魅力だと考えます。弱さを認め、それを乗り越えて新境地へ向かう彼女の挑戦を、2019年08月22日現在の私たちは全力で応援したい気持ちでいっぱいです。
もちろん、日本男子勢も黙ってはいません。安定した成績を残している錦織圭選手や、前哨戦でその錦織選手を破る快挙を見せた西岡良仁選手など、見逃せない顔ぶれが揃いました。故障を抱えながらも戦い抜こうとする大坂選手に、ニューヨークの女神は再び微笑んでくれるのでしょうか。2019年08月26日から始まる歴史的な14日間に、日本中、そして世界中の視線が注がれることは間違いありません。
コメント