中部地方の知の拠点である名古屋大学が、今まさに驚異的な飛躍を遂げています。2019年08月24日、同大学がまとめた2018年度の特許収入が、前年度の4倍以上となる3億円の大台を突破したことが明らかになりました。これは比較可能なデータが残る2006年度以降で過去最高額であり、知財戦略の転換が鮮やかな成果として実を結んだ格好です。SNS上でも「名大のポテンシャルが凄まじい」「地方国立大の希望の星だ」といった称賛の声が相次いでいます。
かつて名古屋大学といえば、ノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇特別教授らによる「青色発光ダイオード(LED)」の特許収入で、2006年度には全国トップに君臨していました。しかし、特定の巨大特許に依存する危うさも抱えており、2011年度に特許が切れた際には、収入が1000万円を割り込むという厳しい冬の時代を経験しています。今回の劇的なV字回復は、一つの成功に甘んじることなく、次世代の柱を模索し続けた大学側の粘り強い改革が生んだ必然の結果と言えるでしょう。
医療・バイオ分野が牽引する「ポスト青色LED」の新時代
今回、名大の躍進を支えた原動力は、得意のエンジニアリング分野に加え、新たに注力してきた医療・バイオ関連の知財です。特に注目を集めているのが、比較的低コストで提供可能な白血病治療薬の製造技術になります。この技術は富士フイルムグループへライセンス供与されており、画期的ながん治療法の確立に向けて大きな期待が寄せられているのです。こうした最先端のライフサイエンス分野での成功は、大学の社会的価値を一層高める重要な要素になるはずです。
また、付属病院が開発した地域医療情報共有システムも、2018年度だけで52もの自治体や機関と契約を結ぶなど、着実な収益源へと成長しました。特許収入とは、大学の研究成果がどれだけ実社会で役立っているかを示す「貢献度のバロメーター」でもあります。東京大学や京都大学が例年上位を独占する中で、名古屋大学が2017年度の8位から一気に3位へと食い込む勢いを見せている事実は、日本の学術界に新鮮な驚きを与えているに違いありません。
特筆すべきは、名大が構築した「攻めの知財管理体制」です。以前は外部機関に頼っていた交渉業務を、現在は5名の弁理士や民間企業出身のエリートを揃えた「学術研究・産学官連携推進本部」が直轄しています。弁理士とは、発明などの知的財産権を守るための手続きを代行する国家資格を持つ専門家です。彼らがプロの視点で企業ニーズを見極め、権利化から契約交渉までを一手に行うことで、研究者が生み出した価値を最大化することに成功しました。
さらに、大学発のスタートアップ企業を支援するための画期的な仕組みも導入されました。資金力の乏しい新興企業から一時金を受け取る代わりに、将来の利益を約束する「新株予約権」を割り当てる手法です。これは、大学側が一定の経営リスクを背負う代わりに、企業の成長に伴うリターンを狙うという非常にアグレッシブな取り組みです。リスクを恐れず民間感覚を取り入れる名大の姿勢こそ、停滞する日本の産業界を打破するヒントになるのではないでしょうか。
「東大や京大には規模で及ばないが、ノーベル賞受賞者数のように名大の名を全国に轟かせたい」と語る佐宗章弘本部長の言葉からは、さらなる高みを目指す強い決意が滲み出ています。単なる研究機関に留まらず、社会を牽引するビジネスパートナーとしての顔を見せ始めた名古屋大学。彼らが描く未来図は、日本の大学が持つ「眠れる資産」の活用方法を、私たちに力強く示してくれています。今後のさらなる飛躍から目が離せそうにありません。
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