ホロコーストの教訓から読み解く組織の闇!同志社大学・太田肇教授が鳴らす「承認欲求」の警鐘と現代日本の不祥事

2019年08月23日、同志社大学の太田肇教授が紹介した一冊の書籍が、現代社会に生きる私たちの心に深く突き刺さります。クリストファー・R・ブラウニング氏による著書『増補 普通の人びと ホロコーストと第101警察予備大隊』は、歴史の闇に光を当てた衝撃的なドキュメントです。理性と豊かな感情を持ち合わせたはずの「ごく普通の人々」が、なぜ凄惨な虐殺に手を染めてしまったのかという謎を、本書は冷徹に解き明かしています。

特筆すべきは、残虐な行為に走った動機が決して強制的な命令だけではなかったという点でしょう。彼らを突き動かしたのは、軍団という集団の中で一人前の仲間として認められたいという切実な願いでした。また、周囲から「弱虫」という不名誉なレッテルを貼られることを極端に恐れる心理が、彼らを非人間的な行動へと駆り立てたと分析されています。SNS上でも「自分なら拒絶できたと言い切れるだろうか」と、人間の脆弱性に怯える声が数多く上がっています。

太田教授はこの衝撃的な歴史的背景を、現代の日本社会で頻発する不祥事と重ね合わせました。大企業や役所で後を絶たない不正検査や情報の隠蔽、さらにはデータの改ざんといった問題は、根底にある心理構造がホロコーストの悲劇と共通しているといえます。悪の規模こそ異なりますが、集団の和を乱したくないという過剰な同調圧力が、個人の良心を容易に沈黙させてしまう現実を私たちは直視しなければならないでしょう。

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「承認欲求の呪縛」が引き起こす現代日本の悲劇とリスク管理

昨今の労働環境で深刻化している過労死やパワハラ問題も、この「承認欲求の呪縛」が無関係ではないと太田教授は指摘します。承認欲求とは、他人から認められたい、集団の中で価値ある存在でありたいと願う本能的な欲求を指す専門用語です。これがポジティブに働けば高い成果を生む原動力となりますが、一度歪んでしまうと、自分自身の命や他者の尊厳を削ってまで組織に尽くしてしまうという、恐ろしい毒に変化してしまうのです。

共同体が持つ圧力は、メンバー間の協力体制を強め、個人の損得を超えた多大な貢献を引き出すというメリットも確かに存在します。しかし、それは常に巨大なリスクと隣り合わせであることを忘れてはなりません。組織の威信が高く、内部の風通しが悪い閉鎖的な環境であればあるほど、構成員はこの目に見えない呪縛に囚われやすくなります。まさに、エリート組織ほど一度歯車が狂うと、誰も止めることができない暴走が始まってしまうのです。

特に本書が、理性を麻痺させた要因として「恥の文化」に言及している点は、日本人にとって極めて重い指摘ではないでしょうか。世間体を重んじ、恥をかくことを死よりも恐れる伝統的な価値観が、不祥事を隠し抜こうとする歪んだ忠誠心を生んでいるのかもしれません。編集者としての私見ですが、今の日本に必要なのは組織への帰属意識ではなく、個々人が「NO」と言える独立した倫理観を育むことだと強く感じさせられました。

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