2019年08月31日、日本武道館で開催されている世界柔道選手権の女子78キロ級決勝にて、前回王者の浜田尚里選手がフランスのマドレーヌ・マロンガ選手に敗れ、惜しくも連覇を逃す結果となりました。世界ランク4位の実力者であるマロンガ選手は、長身から繰り出される圧倒的なパワーを武器にする難敵です。浜田選手はこの強敵に対して入念な防御対策を練って挑みましたが、試合開始から1分20秒が経過した頃、鋭い大内刈りによって技ありを先取されてしまいました。
大内刈りとは、相手の内股に自分の足を掛けて後ろに押し倒す柔道の代表的な足技の一つです。過去の対戦成績でも負け越していた相手に同じ技でポイントを奪われたことは、浜田選手にとって大きな精神的ダメージとなったに違いありません。しかし、ここからが「寝技の女王」の真骨頂です。ポイントを奪われた直後の展開で、浜田選手は一瞬の隙を逃さず得意の寝技へと引き込み、逆転を狙う腕ひしぎ十字固めの体勢を作り上げました。
この絶好のチャンスに会場のボルテージは最高潮に達しましたが、わずかに極めが甘く、マロンガ選手に腕を抜かれてしまいます。起死回生の一手が不発に終わった焦りからか、残り1分30秒で強引に仕掛けた大外刈りを返され、無念の一本負けを喫しました。増地女子監督も「あそこで決めきれなかったのがすべて」と語るように、一瞬の精度の差が勝敗を分ける非情な結末となったのは、勝負の世界の厳しさを物語っているでしょう。
浜田選手は、ロシア発祥の格闘技である「サンボ」の世界選手権でも優勝経験を持つ異色の柔道家として知られています。サンボは関節技や投げ技が非常に多彩な競技であり、その技術を柔道に昇華させた彼女の寝技は世界中から恐れられてきました。今大会でも準決勝までの4試合中3試合で寝技による一本勝ちを収めており、その安定感は誰もが連覇を確信するほどでしたが、決勝の舞台には予想だにしない大きな壁が立ちはだかっていたのです。
SNS上では「浜田選手の寝技への執念には感動した」「マロンガ選手のパワーが規格外すぎる」といった声が多く寄せられており、敗れはしたものの彼女のスタイルを支持するファンは少なくありません。一方で、立ち技での組み手争いにおいて主導権を握れなかった点に課題を感じる意見も見受けられます。世界中が日本の寝技を徹底的に研究してくる中で、どのようにして自分の形に持ち込むかが、今後の大きなテーマになるのではないでしょうか。
私個人の見解としては、浜田選手の「肉を切らせて骨を断つ」ような攻撃的な姿勢こそが、柔道の醍醐味を象徴していると感じます。守りに入るのではなく、常に一本を取りに行く姿勢は、観る者の心を揺さぶる強さがありました。マロンガ選手との力の差を認める彼女の謙虚な姿勢があれば、この銀メダルを糧にさらなる進化を遂げるはずです。立ち技と寝技が完璧に融合した「理想の柔道」を完成させる日は、そう遠くないと信じています。
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