群馬県が、古墳時代を中心に関東地方で栄えた「東国文化(とうごくぶんか)」を、今、強力にアピールしています。県内各地に残る古墳や埴輪(はにわ)、そして貴重な遺跡をテーマにしたイベントや、最新技術を用いたアプリケーションを次々と展開し、その認知度向上に力を注いでいるのです。群馬は「東日本最大の古墳大国」とも称されるほどの歴史的資産を持ちながら、その価値が県外では十分に知られていないという課題を抱えてきました。しかし、誰もが楽しめるコンテンツを通じて、これらの歴史遺産を地域の観光資源として最大限に活用しようという熱意が伝わってきます。
なぜ群馬県にこれほど多くの古墳があるのでしょうか。その背景には、肥沃な土壌と豊富な水資源に恵まれ、古代においてヤマト王権と連携する強大な勢力が形成されていたという歴史的な事実があります。この地では、仏教や文字文化も比較的早くから発展していたことがわかっています。県内には大小合わせて1万3000基を超える古墳が存在し、中でも太田市にある太田天神山古墳は、全長が210メートルにも及び、東日本で最も大きな古墳として知られています。また、大陸からもたらされたとされる金銅製品といった貴重な出土品が多く残されている点も、当時のこの地域が非常に重要な役割を担っていたことを物語っているでしょう。
こうした歴史的魅力を広く伝えるため、群馬県は2019年6月2日に前橋市の大室公園で「群馬古墳フェスタ」を開催しました。このイベントでは、大室古墳群を巡るスタンプラリーをはじめ、埴輪作りや火おこしといった家族連れが楽しめる体験コーナーが多数用意されました。古墳をテーマにしたイベント自体は2012年度から継続的に行われていますが、今回は過去最多となる約2万8千人もの来場者を記録したといいます。この驚くべき来場者数は、地元の皆さんが歴史に対して抱く関心や、「楽しい体験を通じて群馬の歴史を知りたい」という人々の潜在的なニーズがいかに高まっているかを鮮明に示しているのではないでしょうか。
歴史を「体験」して愛着を深めるユニークな企画
さらに、群馬県は歴史への親しみやすさを追求したユニークな企画を打ち出しています。2019年7月末まで実施されている「群馬HANI-缶ラリー」は、県内の資料館や博物館を訪れた際に、受付で「埴輪への愛」を熱心に語ることで缶バッジがもらえるという、なんとも愛らしいイベントです。5種類以上の缶バッジを集めると、高崎市の県立歴史博物館で限定の缶バッジが当たる「埴輪ガチャ」に挑戦できる仕組みです。単に展示物を見るだけでなく、来館者が自らアクションを起こすことで、より深い記憶と愛着につながる仕掛けになっているところが素晴らしいですね。
また、最新技術を取り入れた取り組みも進行中です。2019年3月からは、渋川市の黒井峯遺跡(くろいみねいせき)を紹介するスマートフォン用アプリが配信され、利用者の間で好評を博しています。この遺跡は、榛名山(はるなさん)の噴火によって集落がそっくりそのまま埋もれてしまった、いわば「日本のポンペイ」とも称される貴重な史跡です。アプリでは、遺跡内でスマートフォンをかざすと、集落が埋没する前の様子がVR(仮想現実)のパノラマ画像で再現されます。このように、難解に思われがちな遺跡の姿を、直感的に理解できるXR技術(クロスリアリティ技術)を活用することで、歴史学習をエンターテインメントに変えている点は、現代の広報戦略として非常に優れていると感じます。
今後の予定として、2017年にユネスコの「世界の記憶」に登録された高崎市の上野三碑(こうずけさんぴ)をアピールするため、かるたの制作が進められているそうです。上野三碑とは、飛鳥時代から奈良時代に作成された3つの石碑、すなわち、山上碑(やまのうえひ)、多胡碑(たごひ)、金井沢碑(かないざわひ)の総称で、古代東アジアの交流や仏教の普及を知る上で極めて重要な資料です。また、昨年の埴輪の人気投票の結果を受けて、関連書籍の発売も計画されています。
県では、2017年度に「東国文化推進室」を設置し、県内の古墳や遺跡の周知活動を本格化させました。県の調査によると、県民の東国文化に対する認知度は、2013年度には4割にも満たない状況でしたが、県内のすべての中学校で東国文化の副読本が配布されたことなどの効果もあり、2018年度には約7割にまで大幅に向上したことが明らかになりました。この成果は、地道で継続的な啓発活動が、必ず実を結ぶことを証明しているといえるでしょう。群馬県は、2020年春に開催が予定されているJRの大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」に向けて、旅行会社に対して遺跡や古墳を巡るツアーの造成を働きかけている最中です。これらの取り組みを通じて、県外からの観光客誘致を強力に進めていく考えです。
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