2019年09月12日現在、世界の金融市場では本来「最も安全な資産」とされる国債を巡り、異常なまでの投機熱が渦巻いています。驚くべきことに、ドイツの10年物国債の利回りはマイナス0.7%という水準まで低下しました。これは満期まで保有すれば確実に損をする計算になりますが、それでも価格が上昇し続けているのです。投資家たちはもはや、金利による収益ではなく、さらなる価格の上昇だけを狙ってマネーを投じている状況といえるでしょう。
驚異的な数字を叩き出しているのはドイツだけではありません。オーストリアの100年国債にいたっては、年初からのリターンが68%という、債券とは思えないほどの高騰を見せています。SNS上でも「マイナス金利の国債を奪い合うなんて正気の沙汰ではない」といった驚きの声が広がっており、市場の歪みは隠しきれません。こうした現象の背景には、世界的な金余りによって行き場を失った莫大な資金が、長期金利を極限まで押し下げているという構造的な要因が横たわっています。
一方で、株式市場に目を向けると、日米欧の配当利回りは2%から4%程度を維持しており、債券市場のような過熱したバブルの兆候は見られません。では、なぜリスクを冒してまで国債に資金が集中するのでしょうか。そこには、政策や制度面における「国債優遇」という名のカラクリが潜んでいます。具体的には、国際決済銀行(BIS)が定める自己資本比率規制の影響が大きく、銀行が国債を保有する際のリスク評価が極めて有利に設定されているのです。
制度が生んだ歪みと未来への警鐘
専門的な用語で解説しますと、BIS規制における「リスク・ウエート」という指標において、国債はリスクが「ゼロ」と見なされています。対照的に、株式は将来的に250%まで引き上げられる方針であり、金融機関にとって株を持つことは経営上の負担となりかねません。また、会計上のルールでも、株式が時価の下落を反映させる「低価法」を求められるのに対し、国債は「原価法」での評価が許容されるため、損失を表面化させずに持ち続けることが可能になっています。
さらに、主要国の中央銀行による量的緩和(QE)がこの流れに拍車をかけています。量的緩和とは、中央銀行が市場から大量に国債を買い入れることで世の中のお金の巡りを良くしようとする政策ですが、これが結果的に国債価格を不当に吊り上げる要因となりました。私自身の見解を述べれば、この仕組みはもはや健全な市場機能を麻痺させていると感じます。投資という行為が「価値への期待」ではなく「制度上の抜け穴」を利用する手段に成り下がっているからです。
現在、米国が辛うじてゼロ金利の深淵に陥らずに済んでいるのは、企業が株主還元を通じて余剰資本を社会に循環させているからに他なりません。しかし、国債を優遇しすぎる現在の金融制度を放置し続ければ、市場の歪みはいずれ決定的な破綻を招く恐れがあります。今こそ、時代にそぐわなくなった古い規制を抜本的に見直し、本来あるべき健全な資本の配分を取り戻すための改革が求められているのではないでしょうか。
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